
うちのチームでSNS運用や商品ページの改善をしていると、よく実感することがあります。同じ商品、同じスペック、同じ写真を使っていても、キャプションや説明文の言葉選びが変わるだけで、反応がまるで違うということです。コメントの温度感も、保存してもらえるかどうかも、友達にシェアしたくなるかどうかも、結局は「どんな言葉で語りかけられたか」にかなり左右されている気がしています。
「あ、これ分かる」と思ってもらえる文章と、「なんか違う」とスクロールされて終わる文章。その差は、実はテクニックというより言葉のトーンにあることがほとんどなんですよね。今回は、20代女性に向けた発信で「刺さる」表現と「萎える」表現の分かれ目がどこにあるのか、私たちが日々の運用の中で感じていることを言葉にしてみようと思います。特別なコピーライティングの才能がなくても、いくつかのポイントを押さえるだけでかなり変わってくる部分なので、運用担当が一人だけのブランドでも、チームで発信しているブランドでも、参考にしてもらえたら嬉しいです。似たような商品がたくさん並ぶEC・SNSの中で、最終的に選んでもらえるかどうかを分けているのは、機能や価格の差だけではなく、こうした言葉の温度感の差なんじゃないかと、日々の運用の中でよく感じています。
まず、読み手が思わず離脱してしまう「萎える」表現から見てみましょう。多くの場合、悪気があってこうなるわけではなく、「ちゃんと伝えたい」という気持ちが強すぎて、結果的に説教っぽくなってしまっているだけなんです。うちのチームでも過去に反省したことがあるので、他人事だと思わずに読んでもらえたら嬉しいです。
「そろそろ自分にちゃんと投資した方がいい」「毎日のスキンケア、後回しにしていませんか」というような言い回しは、良かれと思って書いていても、読み手からすると急に注意されたような感覚になります。友達がこんな言い方で何かを勧めてきたら、正直ちょっと引いてしまいますよね。ブランドが読み手の生活態度を評価する立場に立ってしまうと、その瞬間に対等な関係が崩れてしまうんです。「そろそろ本気で見直しませんか」「今のままで満足できていますか」のような、疑問形にすることで柔らかく見せているだけの説教もよくあるパターンで、結局は生活態度を試されているような気分にさせてしまいます。私たちも過去の投稿を見返して、良かれと思って書いた一文がまるっと説教になっていて青ざめたことが何度かあります。
「教えてあげる」「気づかせてあげる」というスタンスが行間から漂う文章は、書いた側にそんな意図がなくても伝わってしまいます。「実は多くの人が知らないのですが」のような前置きも、悪気はなくても「自分は知っている側」というポジションを先に取ってしまう言い方です。「これが正解です」と言わんばかりの言い切り型の文章、たとえば「このアイテムは今すぐ買うべき」と迷いなく言い切ってしまう表現を見ると、提案というより指示のように感じて、少し身構えてしまう人も多いはずです。「知らないと損しますよ」「まだ使ってない人、正直心配です」のような煽り系の前置きも、良かれと思って使いがちですが、読み手を焦らせて判断させようとしている構図が伝わってしまいます。同じ内容でも「私たちも最近気づいたんですけど」と自分ごと化して話すだけで、上下関係のニュアンスはかなり薄まる印象があります。
「いかがでしたか?」「今回は〇〇についてご紹介しました!参考になれば嬉しいです」というテンプレート的な結び、「近年、SNSの普及に伴い〇〇が注目されています」という書き出し。これらは文章として間違っていないのですが、どこかで見たことがある感じがして、書き手の人格が見えてこないんですよね。SNSのキャプションなのに、急に「ポイントは3つあります。1つ目は…」と構造だけきっちり整えてしまうのも、体温がすっと下がって見える瞬間です。同じ言葉を返すだけの接客チャットの「ご質問ありがとうございます、〇〇についてのご質問ですね」というオウム返しも、同じ理由で距離を感じさせてしまいます。「〜という声もあるかもしれません」「〜と感じる方も多いのではないでしょうか」といった、誰の意見でもない曖昧な仮定を挟む言い回しも、量産している最中によく出てきてしまう定型句のひとつです。下書きを生成AIで作ること自体は、今はごく普通の工程だと思っていて、それ自体が悪いわけではありません。大事なのは、出てきた文章をそのまま貼らずに、自分たちの語彙やこれまでのやり取りのクセに合わせて一度書き直す一手間を挟むことだと感じています。
普段のトーンと関係なく若い言葉を差し込むと、逆に「頑張って若づくりしてる」感が出てしまいます。すでに使われなくなった数年前の流行語をそのまま使い続けているケースもよく見かけますが、その言葉が今も現役かどうかは、実際にその言葉を日常で使っている人に確認してからにした方が安全です。他のSNSで流行っていた言い回しを、文脈を理解せずそのまま別の媒体に持ち込んでしまうのも、噛み合わなくて空気だけ変わってしまう原因になります。たとえば普段は落ち着いたトーンで書いているアカウントが、急に「これマジ神アイテムなんですけど」と語尾だけ若づくりすると、その一文だけ別の人が書いたように浮いて見えてしまいます。流行り言葉は旬が短いので、半年前に自分が使っていた言葉を見返して「今も普通に使うか」を確認するだけでも、"すべり"はかなり減らせる感覚があります。
この4つに共通しているのは、書き手と読み手のあいだに上下関係やズレを感じさせてしまうことです。伝えたい内容そのものは正しくても、関係性の設計がずれてしまうと、内容ごと届かなくなってしまうんですよね。
逆に「これは自分に向けて書かれている」と感じてもらえる文章には、共通点があります。萎える表現の逆を意識するだけでも近づけますが、あらためて3つに分けて整理してみます。
「教える」のではなく「一緒に考える」立場に立つこと。うちのチームで反応が良かった投稿を振り返ると、「私たちも最初は迷った」「正直これで合ってるのか分からなかった」というように、ブランド側も同じ目線で悩んでいることを見せている文章が多い傾向にあります。うまくいかなかった試行錯誤や、育て中の途中経過をそのまま見せる方が、完成された成功談より距離が縮まることも多いんです。「これで合っているか正直まだ分からないけど、今のところこう考えています」くらいの言い方の方が、変に整えられた説明よりも信用されやすい、という場面はうちのチームでも何度も見てきました。たとえば「◯◯という使い方、私たちも半信半疑で試したら意外とよかったので共有します」というように、検証中であることをそのまま見せる書き方は、断定していないぶん気軽に試してもらいやすい表現になります。
「ライフスタイルの多様化に対応した新提案」のような抽象的な言葉ではなく、「金曜の夜、化粧を落とすのすら億劫な日」「友達の結婚式に着ていく服に何日も悩んでいる週末」のように、読み手が自分の生活のワンシーンとして想像できる描写にすると、一気に距離が縮まります。抽象的な便益より具体的な一場面の方が記憶に残りやすいというのは、20代女性の「買う前の行動」——レビュー・UGC・インフルエンサーをどう設計するかで触れている、購入前に「リアルな声」を確認する行動とも重なる部分だと感じています。同じ商品でも「肌の乾燥が気になる方へ」ではなく「エアコンの効いたオフィスで、お昼過ぎに頬のあたりがカサつく感じ」くらいまで場面を絞ると、読み手は自分の一日のどのタイミングでその商品を思い出せばいいのかが具体的にイメージできるようになります。
「これを使えば人生が変わる」というような大げさな言い切りではなく、「毎日じゃなくてもいい、疲れた日の頼れる1本」というように、効果を盛らずに正直な範囲で伝える文章の方が、結果的に信頼されやすいんです。全員に刺さる商品なんてそもそも存在しないと分かった上で、「合う人にはきっと合う」くらいの距離感で書く方が、結果的に合う人には深く刺さります。景品表示法の観点でも、成果を言い切ってしまう表現は避けるべきものなので、誠実さは倫理面でも実利面でもプラスに働きます。「盛らないと弱く見えるのでは」と不安になる気持ちも分かるのですが、実際は言葉を盛れば盛るほど、どこか他人事のような響きになってしまう方が多い気がしています。「正直、香りの好みは分かれると思います」「毎日欠かさず使えているわけではないですが、それでも手放せていません」のように、あえて弱さや条件を先に見せる書き方の方が、読み手の警戒をゆるめてくれる場面が多い印象です。
萎える言い方と刺さる言い方を並べてみると、変換のコツがつかみやすくなります。
| 萎えやすい言い方 | 刺さりやすい言い方 |
|---|---|
| そろそろ自分にちゃんと投資した方がいい | 私たちも同じことで迷ったので、参考までに |
| このアイテムは今すぐ買うべき | 毎日じゃなくてもいい、疲れた日の頼れる1本 |
| いかがでしたか?今回は〇〇をご紹介しました! | 今日の話、次に会ったときの話題にしてもらえたら嬉しいです |
| 知らないと損しますよ、まだの方は今すぐチェック | 私たちも最近気づいたんですけど、これ地味に便利で |
並べてみると分かるのですが、右側の言葉は左側よりやわらかいというだけではなく、書き手と読み手の距離感そのものが変わっています。表現を弱めるということではなく、誰目線で書くかを変える作業なんだと捉えると、置き換えの精度が上がっていくと思います。
「刺さる」「萎える」の分かれ目が言葉選びにあるとわかっても、担当者の感覚だけに頼っていると、投稿者が変わるたびにトーンがぶれてしまいます。うちのチームでは、次の3ステップで社内のトーンを言語化するようにしています。特別な会議体を新設する必要はなく、既存のミーティングの最後10分を使うくらいで十分に進められる作業です。
「どんな相手に、どんな距離感で話しているか」を一言で表す作業です。「放課後に友達とカフェで話しているくらいの温度感」「頼れる先輩というより、隣で一緒に悩む同僚」など、具体的な人物像や関係性でイメージを共有すると、担当者が変わってもブレにくくなります。抽象的な言葉だけで終わらせず、「もしこのブランドが一人の人だったら、何歳くらいで、休日は何をしていそうか」くらい具体的に描いてみると、チーム内での共通認識がぐっと持ちやすくなります。関わる人数が少ないブランドなら、担当者一人が自分の言葉でこれを書き出すだけでも十分です。実際にうちのチームでは「土曜の朝、友達から相談LINEが来たときのテンションで返す」というくらいまで具体化して、迷ったときはそこに立ち戻るようにしています。
過去の投稿や商品ページの中から「これは刺さった」と感じたものと「これは萎えた」と感じたものを実際に集めて並べてみると、使いがちな言葉の傾向が見えてきます。月に1回、直近の投稿を数本並べて全員で「これは刺さった」「これは萎えた」を言い合う時間を持つだけでも、好ましい言い回し・避けたい言い回しのリストは自然とできあがっていきます。新しく入ったメンバーでもトーンを揃えやすくなるので、引き継ぎの負担も減ります。集めた言葉は「よく使う語尾」「使ってよい絵文字や記号」くらいの粒度で分類しておくと、実際に書くときにそのまま参照しやすくなります。
効果や結果を言い切ってしまう強すぎる断定の言葉、説教臭くなりやすい「〜すべき」「〜した方がいい」といった言い回し、無理に若者言葉を使おうとした結果生まれる不自然な単語などを、具体例つきで一覧化しておくと判断に迷いません。ここで大事なのは、大企業のトーンをそのまま参考にしないことです。大企業のブランディングを真似てはいけない理由でも書いたように、規模の大きい会社の丁寧で角が取れた言葉づかいは、安心感より距離感を生みやすく、20代女性向けの発信としては逆効果になることが多いんです。NGワードは「使ってはいけない単語」だけでなく、「この言い回しなら大丈夫」という置き換え例までセットにしておくと、実際に書くときに迷わず手が動くようになります。
世界観・語彙・NGワードリストは、一度作って共有フォルダに置いたら終わり、というものではありません。新しい萎える表現に気づくたびに追記していく、育てていくドキュメントだと思っておくくらいがちょうどいい距離感です。外注のライターさんや代理店に発信の一部を任せている場合は、このリストを最初に渡しておくだけで、トーンのズレをかなり減らせます。
そしてこのトーンづくりは、表面的な言葉のルールだけで終わらせないことも大切だと感じています。ブランディングは「約束」から始まるで触れているように、言葉のトーンはブランドが読み手に対して何を約束しているかの延長線上にあるものです。語彙のリストを作る前に、そもそも自分たちが何を大事にしているブランドなのかを一度言語化しておくと、あとの作業がぐっとやりやすくなります。
SNSの投稿は柔らかい言葉で書けているのに、商品ページやLPになると急に「弊社の〇〇は優れた品質と信頼性を兼ね備えております」のような堅い企業口調に戻ってしまう、というのはよくあるパターンです。読み手からすると、まるで担当者が急に別人になったように感じられて、それまで積み上げてきた親近感が一度リセットされてしまいます。
具体的に並べてみると分かりやすいのですが、たとえばSNSでは「乾燥が気になる季節、これ1本あると心強いです」と書いているブランドが、商品ページでは「本製品は保湿効果に優れ、乾燥対策に効果が期待できます」というNG例のような表現に切り替わってしまうことがあります。この瞬間、読み手の中では「さっきまで話していた人」と「今説明している人」が別人になってしまうんです。OK例としては、SNSの言葉をそのまま商品ページの見出しやリード文に持ち込んで、「乾燥が気になる季節、これ1本あると心強い。そんな声をもとに作りました」くらいまで寄せておくと、ページをまたいでも同じ相手と話している感覚を保てます。
同じことは、公式LINEやメルマガのような、より「個」の距離感が近いチャネルでも起きやすいです。SNSでは友達のように話していたのに、LINEで届く配信文だけ急に「〇〇様、いつもご利用いただきありがとうございます」と切り替わると、その落差のほうが目立ってしまいます。この「別人問題」は採用ページとSNSの間でも起きやすいものです。SNSと採用ページで別人になる会社|ブランドボイスを揃える手順でも整理した通り、接点ごとにトーンを揃える意識を持つだけで、ブランド全体の信頼感がぐっと安定します。商品ページやLPを書くときも、SNSで使っている語彙リストとNGワードリストをそのまま持ち込むのが一番手っ取り早い方法です。
ただし、まったく同じ文章をチャネルごとに使い回す必要はありません。Instagramのストーリーズは数秒で消費される場所なので会話に近いテンポでいい一方、商品ページは購入直前の「本当に大丈夫かな」という不安を解消する場面なので、少し丁寧に理由を添えた方が安心してもらえます。20代女性はどこで買っている?SNS・モールEC利用データで見る集客チャネルの選び方で触れているように、チャネルごとに見られ方や使われるシーンが違うので、温度感の微調整はあってよいと感じています。大事なのは「人格」そのものが変わらないことで、話し方の速度や丁寧さのレベルが変わるくらいは自然な範囲です。
もうひとつ見落とされがちなのが、コメント返信やDMでの一次対応です。投稿文はしっかりトーンを整えているのに、コメント欄に来た瞬間に「ご覧いただきありがとうございます。ご検討よろしくお願いいたします」という定型対応に切り替わると、それまでの親近感が一気に離れてしまいます。返信こそ一番リアルに人格が出る場所なので、ここまでトーンを揃えられると、SNSと商品ページ・LPの一貫性はかなり安定してきます。
最後に、今すぐ自分たちの発信を見直せる簡単なチェックリストを置いておきます。投稿やページ文をひとつ選んで、当てはめてみてください。一人で運用している方はその場で読み返すだけでも十分ですし、チームで運用している方は、直近の投稿を数本持ち寄って一緒に当てはめてみると、人によって基準がずれているところが見えてきて面白いと思います。
チェックがつく項目が多いほど、言葉のトーンを整理するタイミングが来ているということかもしれません。一気に直す必要はなく、NGワードリストに1つずつ追加していくくらいのペースで十分だと感じています。月に1回など、決まったタイミングでこのチェックリストに戻ってくる習慣をつけておくと、トーンが少しずつずれていくのにも早く気づけるようになります。
「刺さる」と「萎える」の分かれ目は、才能やセンスの差ではなく、対等な目線で書けているか、具体的な情景が見えるか、誇張せず誠実に伝えられているか、という積み重ねの差なんだと感じています。うちのチームでも、まだ完璧にできているとは思っていません。だからこそ、定期的に自分たちの発信を読み返して、萎えていないかを確認する時間を持つようにしています。
もし自社の発信のトーンに迷いがあれば、まずは今回のチェックリストを使って、SNSと商品ページを並べて見直してみてください。世界観・語彙・NGワードという3つの軸に分けて考えるだけでも、次に書く文章はきっと変わってくるはずです。どこで発信するか、どんな声を信じてもらうかといったテーマについても、今後このシリーズで一緒に整理していけたらと思っています。
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