業界動向2026.08.29TWELVE

女性向けブランディングの始め方|女性ウケを狙うと外れる理由

女性向けブランディングの始め方|女性ウケを狙うと外れる理由

「女性向けの商品なので、女性に刺さるブランディングをしたい」というご相談を、ここ1年でとても多くいただくようになりました。ただ、実際にお話を聞いていくと、「女性」がどんどん大きな主語になっていくことがほとんどなんです。20歳の学生と45歳の共働きのお母さんが、同じ棚の前で同じ理由で手を伸ばすことは、まずありません。この記事では、その主語をどこまで小さくすればいいのかを、公的なデータと私たちの現場感の両方から整理していきます。

「女性向け」と言った瞬間に、誰の話か分からなくなる

ブランディングの打ち合わせでホワイトボードに「ターゲット=女性」と書かれた瞬間、そこから先の議論はほぼ止まります。理由はシンプルで、日本の女性は約6,000万人いて、その全員に共通する購買行動なんて存在しないからなんです。

私たちがよく見るのは、こういう進み方です。「女性向け」と決める → 具体的な顔が浮かばない → とりあえず「やわらかい印象」にしよう → 淡いピンクと丸ゴシックと花のあしらい。ここまで来ると、もう競合と見分けがつかない状態になっています。棚に並べたときに「どれも同じに見える」と言われるパッケージは、だいたいこの道をたどってきています。

逆に、うまくいっているブランドは主語がとても小さいです。「都内で一人暮らしをしていて、朝は5分しかない20代前半」くらいまで絞られている。狭すぎるのでは、と心配になる方が多いのですが、実際は逆で、狭くしたほうが結果的に広く届きます。一人に向けて書いた言葉は、その一人に似た人全員に届くからなんです。

もうひとつ厄介なのが、社内では「女性向け」で会話が成立してしまうことなんです。会議に出ている人全員が、それぞれ違う顔を思い浮かべたまま「そうですね」と言える。デザインが上がってきた段階で初めて「思っていたのと違う」となり、そこから作り直しが始まります。この手戻りは、最初の30分で主語を決めておけば防げたものがほとんどです。

私たちがブランド設計に入るとき、最初のワークで必ず聞くのは「その人の1日を、朝起きてから寝るまで話してください」という質問です。答えられない場合は、その時点でまだ商品の話しかしていない、ということになります。商品ではなく人の話ができるようになって、やっとブランディングのスタート地点に立てるんですね。

ブランドの土台をどう言語化するかについては、ブランディングは「約束」から始まるでも別の角度から書いています。あわせて読んでみてください。

「女性ウケ」を狙うと外れる、3つの理由

「女性ウケ」という言葉自体が、実は設計をいちばん遠ざけていると感じています。私たちが現場で見てきた外れ方は、だいたい次の3つに分かれます。

① 見た目だけを寄せてしまう。 色をピンクに、書体を丸く、写真をやわらかく。ここまでは誰でもできるので、差がつきません。買う理由は見た目では作れないんです。むしろ「女性向けだからピンク」という発想は、受け取る側からすると決めつけられている感じとして伝わることがあります。実際、20代のモニターに複数案を見せると、いちばん反応が薄いのが「いかにも女性向け」の案だったということが何度もありました。

② 「女性は共感で買う」を雑に信じてしまう。 共感は入口としては効きますが、それだけでは最後の一歩まで届きません。実際には「価格に納得できるか」「置き場所に困らないか」「捨てるときに面倒じゃないか」といった、とても現実的な条件で最後の一歩が決まります。ストーリーを丁寧に語ったのに転換率が動かない、というご相談はよくいただくのですが、商品ページを見せていただくとサイズや容量、洗い方といった実務的な情報が下のほうに追いやられていることがほとんどです。共感は買う理由を作りますが、不安は買わない理由を作ります。両方を同じページに置いてください。

③ 作り手に当事者がいない。 これがいちばん大きいと感じています。20代女性向けの商品を、20代女性が一人も入っていないチームで作ると、細かい違和感が最後まで残ります。「その言い回しは今は使わない」「この写真の撮り方は古く見える」——こういう指摘は、当事者からしか出てきません。しかもこの違和感は、受け取る側にはうまく言語化されないまま「なんとなくピンとこない」という形でだけ残ります。理由が言われないので、こちらは改善のしようがない。だから外れていることにすら気づけないんです。

女性向けブランディングで主語が大きすぎると外れることを4コマで説明したイラスト

ホワイトボードに「女性」とだけ書いた状態から、実際に話を聞いて主語を小さくしていくまでの流れ。※イラストはイメージです

数字で見る——20代女性が情報に触れている場所

感覚だけで進めると危ないので、公的なデータを見ておきましょう。総務省情報通信政策研究所の「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2026年6月公表)によると、20代のSNS利用率は次のようになっています。

サービス20代の利用率全年代平均
LINE97.7%
YouTube96.3%
Instagram82.6%
X(旧Twitter)73.4%
TikTok61.5%

出典:総務省情報通信政策研究所「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2026年6月公表)

ここで大事なのは、順位そのものよりも「1つのSNSだけで完結していない」という事実です。TikTokで存在を知って、Instagramで世界観を確認して、LINEで友達に共有して、最後に検索して買う——という動きが当たり前になっています。だから「うちはInstagramだけやります」という設計は、途中で線が切れてしまうんです。

もうひとつ見落とされがちなのがLINEの数字です。97.7%という利用率は、他のどのSNSよりも高い。それなのに企業側の使い方は、いまだに一斉配信のクーポンで止まっていることが多いんですよね。LINEは「もう知っている人」との距離を縮める場所であって、新しく知ってもらう場所ではありません。この役割分担を間違えると、配信のたびにブロックが増えていきます。

買う場所についても偏りがあります。株式会社いつも・インテージ「生活者のEC利用実態調査2024」では、20代がメインで使うECモールはAmazonが37.6%で最も高く、楽天市場は15.2%と全年代のなかでも低い水準でした。「うちは楽天が主戦場だから20代に届いているはず」とは言えないということですね。どのチャネルで会うかは、20代女性はどこで買っている?SNS・モールEC利用データで見る集客チャネルの選び方で詳しく分解しています。

年代が10違うと、買う理由がここまで変わる

「女性」をひとくくりにできない理由を、いちばん分かりやすく示せるのがここだと感じています。私たちが日々クライアントのレビューやSNSのコメントを読んでいて感じる違いを、整理してみました。

20代前半30代40代以降
最初の接点TikTok・InstagramのリールInstagram・検索検索・口コミサイト・友人
買う前に確かめること他の人が使っているか成分・価格の納得感実績・信頼できる会社か
刺さる言葉短くて、正直で、盛らない具体的で、理由がある丁寧で、根拠がある
嫌われる出し方広告っぽさ・押し売りあいまいな効果表現子ども扱い・軽さ

※当社が支援している店舗のレビュー・SNSコメントを日常的に読むなかでの傾向です。統計調査ではありません。

この表を見ていただくと分かるとおり、同じ「女性向け」でも、伝える順番がまるで逆になります。20代には「他の人が使っている」を先に見せたほうが早いですが、40代以降に同じ順番で出すと軽く見えてしまう。逆に40代向けの丁寧な根拠説明を20代のリールに載せると、最後まで見てもらえません。

言葉のトーンをどう作り分けるかは、20代女性に伝わるブランドトーンの作り方にまとめてあります。

女性向けブランディングの始め方——5つの手順

ここからは、実際に手を動かす順番です。うちのチームがブランド設計に入るときに踏んでいる流れを、そのまま公開します。

手順1:主語を、一人まで小さくする。 「女性」ではなく「◯歳・◯◯に住んでいて・平日の朝は◯分しかない人」まで書ききります。ここで手が止まるなら、まだ顧客のことを知らないという合図なので、次の手順に進まずに調べにいきます。

手順2:その人が今どこで困っているかを、本人の言葉で集める。 自社のレビュー、競合のレビュー、SNSの投稿。特に星3のレビューが宝の山です。星5は褒め言葉しか書かれておらず、星1は感情が先に出ています。星3には「良いんだけど、ここだけ惜しい」という具体が書かれています。

手順3:約束を1文にする。 「私たちは、◯◯な人に、◯◯を約束します」。この1文が言えないうちは、ロゴにもパッケージにも進まないほうが早いです。コツは、競合も同じことを言えるなら書き直すということ。「高品質な商品をお届けします」はどの会社でも言えるので、約束になっていません。「朝5分しかない人が、鏡の前で迷わない」くらいまで具体にすると、途端に他社が使えない文になります。

手順4:その1文から、見た目と言葉を降ろす。 順番が逆になっている会社がとても多いんです。色を決めてから約束を考えると、必ずどこかで矛盾します。

手順5:出す場所ごとに、翻訳する。 同じ約束でも、TikTokでは3秒で、商品ページでは1画面で、LINEでは1行で伝える必要があります。中身を変えるのではなく、長さと順番を変えるということですね。「映え」だけでは売れない時代で、この翻訳の失敗例を具体的に扱っています。

この5手順、早ければ2週間で一周できます。時間がかかるのは手順2の「本人の言葉を集める」ところだけで、あとは会議室で決められることばかりなんです。逆に言うと、手順2を飛ばした設計は、どれだけ時間をかけても当たりません。実在する誰かの言葉が1つも入っていないブランドは、社内の想像の集合体になってしまいます。

そして、始めたら最低でも3ヶ月は同じ約束のまま出し続けてください。1ヶ月で反応が無いからと言葉を変えると、受け取る側から見れば「毎回違うことを言っている会社」になります。ブランドは繰り返しでしか積み上がらないので、変えていいのは出し方であって、約束そのものではないんです。

予算が少ないとき、どこから手をつけるか

「ブランディングって、お金がかかるんですよね」と必ず聞かれます。たしかにロゴ刷新・撮影・サイト全面リニューアルを一度にやれば、数百万円の話になります。ただ、その順番でやる必要はまったくありません。予算が限られているときに私たちがおすすめしている順番は、こうです。

優先度やることかかるもの効いてくるまで
1約束を1文にして、社内で揃える会議2〜3回すぐ(判断が速くなる)
2商品ページの1画面目を書き直す数日2〜4週間
3いちばん人がいるSNSを1つだけ整える継続の手間2〜3ヶ月
4写真を撮り直す撮影費1〜2ヶ月
5ロゴ・サイトを作り直す制作費半年〜

ポイントは、1と2はほぼお金がかからないのに、いちばん早く効くということです。商品ページの1画面目は、多くの店舗で「商品名+大きな商品写真」で終わっています。ここに「誰のための、何を約束する商品か」が1行入るだけで、読まれ方が変わります。

逆に、5のロゴ刷新から入る会社がとても多いんです。目に見える変化が大きいので、社内の合意も取りやすい。ただ、約束が決まっていない状態でロゴだけ変えると、「新しくなったけど、何が変わったのか分からない」という感想だけが残ります。順番を変えるだけで、同じ予算でも届き方が変わってきます。

そして、効果を測る指標も先に決めておいてください。売上だけを見ていると、外的な要因に振り回されて判断ができません。私たちは「指名検索の数」「リピート率」「レビューに出てくる言葉」の3つをよく使っています。とくにレビューに自分たちが使ってほしい言葉が出てくるようになったら、約束が伝わり始めた合図だと考えています。

やりがちで、たいてい効かないこと

逆に、時間とお金を使った割に動かなかったことも正直に書いておきます。

やりがちなこと効きにくい理由代わりにやること
とりあえずロゴを作り直す約束が決まっていないと、見た目だけが変わる先に約束を1文にする
インフルエンサーに一度だけ依頼1回では「たまたま見た人」で終わる同じ層に何度も会える設計にする
全SNSを同時に始める更新が止まって、逆に印象が下がる1つに絞って、続く形にする
「women's」「for you」等の英語で雰囲気を作る意味が伝わらず、記憶に残らない日本語で、短く、具体的に
年代を広げて母数を増やす誰の言葉でもなくなるむしろ狭める

とくに最後の「年代を広げる」は、社内で必ず出てくる意見です。母数が減るのが怖いという気持ちはよく分かります。ただ、広げて薄まったブランドが、あとから濃くなることはほとんどありません。狭く始めて、届いた実感を確かめてから広げていくほうが、結果的に早いと感じています。

「誰が作っているか」も、ブランドの一部になる

ここは私たち自身の話になってしまうのですが、避けて通れないので書きます。

うちのチームは全員がZ世代の女性です。20代女性向けのブランドを設計するとき、この構成そのものが判断材料になっています。「その言い方は今はしない」「この写真は無理して撮った感じが出ている」といった指摘が、会議中に自然に出てくるんです。外から調査データを買ってきても、この粒度の違和感までは分かりません。

実際、SNS起点で実店舗へ送客した取り組みでは、渋谷の店舗で前年比180%、本店で120%という結果になったことがあります。※当社の支援実績の一例です。成果を保証するものではなく、効果には個人差・店舗差があります。

お伝えしたいのは数字そのものではなく、「当事者がチームにいるかどうか」で、詰められる細かさが変わるということです。もし社内に対象年代のメンバーがいないなら、モニターでもアルバイトでも構わないので、意思決定の場に一人入れてみてください。会議の景色が変わります。

入れるときのコツは、「意見を聞く」ではなく「決める側に座ってもらう」ことです。参考意見として聞くだけだと、結局は元の案がそのまま通ります。3案のうちどれを出すかを決める権限まで渡すと、そこで初めて本音が出てきます。最初は遠慮して当たり障りのないことを言われるので、2〜3回は続けてみてください。

中小企業ならではの進め方については、大企業のブランディングを真似てはいけない理由もあわせてどうぞ。限られた予算と人手で、どこに寄せるかという話を書いています。

まとめ:狭くするほど、届く

長くなったので、要点だけ整理しておきますね。

女性向けのブランディングは、感覚やセンスの話に見えて、実際はとても地道な作業の積み重ねなんです。誰に向けているのかを決めて、その人の言葉を集めて、約束を1文にして、出す場所ごとに翻訳する。派手さはありませんが、ここを飛ばして先に進んだブランドが、あとから戻ってくるのを何度も見てきました。

まずは手順1だけでも、今週やってみてください。ホワイトボードの「女性」を消して、一人の名前を書くところからで大丈夫です。

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