ブランディング2026.08.15TWELVE

20代女性が「応援したい」と思う会社の共通点——パーパスの伝え方

20代女性が「応援したい」と思う会社の共通点——パーパスの伝え方

「うちの会社にもちゃんと理念があるのに、なぜ20代女性のお客さまには響いている実感がないんだろう」というご相談を受けることが増えました。ミッションステートメントは立派に作ってあるし、採用ページにもきれいな言葉が並んでいるんです。でも実際に20代女性が「この会社を応援したい」と思うかどうかを決めているのは、そうした立派な文章ではなく、もっと小さな場所だったりします。SNSのプロフィール1行、商品タグに書かれた一言、スタッフが返してくれるコメント、値上げのお知らせの書き方——うちのチームが日々SNSやEC運用に関わる中で感じているのは、パーパスは新しく「作る」ものというより、すでにある想いを日々の接点に「翻訳して置く」ものだということなんです。この記事では理念そのものの作り方には触れず、すでにある想いを20代女性が実際に触れる場所にどう置くかを、接点ごとに分解していきます。

「応援したい」は消費ではなく、支持表明なんです

たとえば、コンビニの棚に似たような価格帯のドリンクが並んでいるとき、なんとなく手に取るブランドが決まっている、という感覚ってありますよね。うちのチームの20代のメンバーに聞いても、「値段も味もそこまで変わらないなら、なんとなく感じがいい方を選ぶ」という声が多いんです。この感覚は飲み物に限った話ではなくて、コスメやアパレル、雑貨を選ぶときにも同じことが起きています。この「感じがいい」の中身をたどっていくと、味や価格ではなく、そのブランドがSNSでどんな発信をしているか、困ったときにどう対応してくれそうか、という「会社としての姿勢」への信頼だったりするんです。つまり20代女性がお金を払っているのは商品そのものだけでなく、その会社を応援するという意思表示でもあるんですよね。同じような機能の商品なら、応援したい会社にお金を払いたい、という感覚が根っこにあるように感じています。

「パーパス経営」という言葉自体は、ここ数年で経営者向けの記事や研修でよく見かけるようになりました。でも実際に商品を選んでいる20代女性が、その言葉を意識しながら購入を決めているわけではないんです。SNSのタイムラインをスクロールする指は一瞬も止まらないので、むしろ言葉にする前の、もっと感覚的なレベルで「この会社、信頼できそう」「なんか無理してる感じがする」を瞬時に判定している印象があります。だからこそ、理念を立派な言葉で掲げること自体にはあまり意味がなくて、その理念がどんな形で日常の接点ににじみ出ているかのほうが、ずっと大きな影響を持っているんだと感じています。うちのチームでも、こうした一瞬の判定の積み重ねが、最終的にフォローするかどうかを決めていると捉えるようにしています。

ここで気をつけたいのが、理念を大企業のCSRページのような立派な文章に仕立てようとしてしまうことです。中小企業がそのまま真似をすると、かえって嘘っぽく見えてしまうことも多いんです。社員10人のブランドが「持続可能な社会の実現へ」というスケールの大きい言葉を掲げても、日々の投稿とのギャップに気づかれてしまうんですよね。実際、大企業のブランディングをそのまま真似ることのリスクについては大企業のブランディングを真似てはいけない理由でも触れていますが、パーパスの伝え方も同じで、規模に見合わない立派さより、日々の小さな接点に一貫した姿勢がにじんでいるかどうかのほうが、20代女性にはずっとよく見えているんです。

この記事では、パーパスそのものの作り方には踏み込みません。すでに社内にある想いを、20代女性が実際に触れる場所にどう置くかを、SNSプロフィールの1行、商品タグや同梱カードの文言、スタッフの言葉、そして値上げやトラブル時の説明という4つの接点に分けて見ていきます。どれも地味な場所に思えるかもしれませんが、実はここでの積み重ねこそが「応援したい」という気持ちを作っているんです。読みながら、自社のSNSやカードの文言を実際に思い浮かべてもらえると、当てはまる部分が見えてくるはずです。

SNSプロフィールの1行に、本気度は隠せない

新しいブランドを知ったとき、20代女性がまず見るのはフィードの投稿よりも先に、プロフィール欄の1行だったりします。友人がストーリーズでシェアしていた投稿からアカウントに飛んできて、フォローする前にまずプロフィールを開く、という動き方は今もよくあることです。うちのチームで運用しているアカウントでも、投稿からプロフィールへの遷移はかなりの割合を占めていて、フォローするかどうかの判断がこの数秒で決まっている感覚があります。ここに会社の説明文をそのまま貼り付けているケースは今でも多いのですが、その数秒で伝わるのは「情報」であって「姿勢」ではないんですよね。

たとえば「20代女性向けアパレルブランドです。新作情報を発信中」というプロフィールは、間違ってはいないのですが、他のどのブランドにも当てはまってしまう言葉なんです。一方で「サイズで諦めてきた人に、着たい服を届けたい」のように、何を大事にしているブランドなのかが伝わる一文が添えられているだけで、印象はまったく変わってきます。前者は情報の掲示板、後者は姿勢の表明になっていて、20代女性が反応しやすいのは圧倒的に後者のほうだと感じています。後者のような一文があると、フォローした後にDMで相談してみようという気持ちにもつながりやすくなる印象があります。

テンプレ的な言い換えに注意する

気をつけたいのは、この1行を「素敵な暮らしを提案します」のような、どのブランドにも当てはまる耳障りの良い言葉に置き換えてしまうことです。姿勢を言葉にしようとした結果、かえって中身のないコピーになってしまうケースは意外と多いんです。大事なのは美しい言葉を探すことではなく、自社が実際に日々の判断に迷ったときに何を優先しているか、その一次情報をそのまま短くすることだと感じています。「値段を下げるか、品質を守るか迷ったとき、うちはどちらを選んできたか」を社内で言葉にしてみると、意外とすんなり1行が見つかることもあります。

この1行をどんな言葉づかいで書くか、つまりトーンの作り方そのものについては20代女性に伝わるブランドトーンの作り方で詳しく紹介しているので、書き方に迷ったらあわせて読んでみてください。この記事で伝えたいのは、トーンの整え方以前に、そこに乗せる中身——つまり自社が何を大事にしているかが、はっきり自分たちの中で言語化できているかどうかなんです。プロフィール1行はその中身がそのまま試される、いちばん厳しい場所だと感じています。飾った言葉を探すより先に、中身を確認することから始めてみてください。

同梱カードや商品タグの一言が、一番読まれている

ECで買った商品が届いて箱を開ける瞬間、同梱されているカードやタグに、意外とじっくり目を通してもらえているという実感があります。SNSのタイムラインを流し見しているときとは違って、届いた箱を開ける瞬間は気持ちが前のめりになっていて、文章を読む集中度がまったく違うんですよね。うちのチームで運用に関わっているブランドでも、開封の様子をSNSに投稿してくれるお客さまの動画を見ると、商品そのものより先に、同梱カードの文言にカメラが向いていることが少なくないんです。この一瞬は、会社が用意した文章を一番集中して読んでもらえる貴重な接点だと感じています。

ここでよく見かけるのが、「ご購入ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします」という、どの通販サイトでも見たことのあるテンプレ文言です。感謝の気持ち自体は伝わるのですが、その会社らしさは何も残らないんですよね。一方で「この価格には、◯◯という理由があります」「安さより長く使えることを優先して、この仕様にしました」のように、会社が何を優先してこの商品を形にしたのかという判断の理由が一言添えられていると、同じ紙切れでも受け取り方がまったく変わってきます。値段や仕様に対する「なぜ」を説明できているカードは、開封動画の中で読み上げてもらえたり、そのまま画面に映してシェアしてもらえたりすることも増える印象があります。

商品タグの裏側に書く一文

アパレルやコスメのタグの裏側も、地味だけど見られている場所です。素材や洗濯表示だけが書かれているタグと、その隅に「この色は、◯◯をイメージして選びました」のような一文が添えられているタグとでは、捨てずに取っておいてもらえる確率が変わってくる印象があります。クローゼットの中でタグだけ切り取って保管している、という声を聞いたこともあり、そこまで愛着を持ってもらえるかどうかは、この小さな一文の有無が影響しているように感じています。タグを見返すたびにブランドの姿勢を思い出してもらえるとしたら、それはSNSの投稿よりも長く手元に残る資産になってくれるんです。

こうした一言をどう作るかは、実は難しいことではなくて、社内にすでにある「なぜこの商品を作ったか」という想いを、読み手に届く短い言葉に翻訳するだけの作業だったりします。企画会議の議事録や、商品開発のときのやりとりの中にヒントが眠っていることも多いんです。この翻訳の具体的な手順についてはブランディングは『約束』から始まるで詳しく紹介しているので、カードやタグの文言に悩んだときはこちらも参考にしてみてください。理念を新しく作る必要はなくて、すでにある言葉を接点ごとに置き直すだけで十分なんです。

スタッフの言葉づかいに、理念は一番正直に出る

SNSのコメント欄やDMでのやりとりは、会社が用意した文章ではなく、その場でスタッフが考えて返す言葉が並ぶ場所です。投稿本文は担当者が時間をかけて練り上げられますが、コメント返信はその場の判断がそのまま出てしまうぶん、うそがつきにくい接点でもあります。うちのチームでも複数のブランドのコメント返信を見てきましたが、理念が浸透しているブランドほど、返信の言葉づかいに一貫性があります。逆に理念が形だけになっているブランドほど、返信は事務的なテンプレートの繰り返しになりがちで、同じ質問に対しても人によって温度差が出てしまうことが多いんです。

たとえば「どうしてこのシリーズ、色展開がこんなに少ないんですか」というコメントに対して、「今後の展開にご期待ください」とだけ返すのと、「色数を絞っているのは、余った在庫をセールで大量に処分するようなものづくりをしたくない、という考えからなんです」と返すのとでは、伝わる姿勢がまったく違います。後者は会社が何を優先して商品を作っているかという判断基準がそのまま言葉になっていて、これこそが理念を暗記するのではなく判断基準として持っている状態だと感じています。一件一件は小さなやりとりでも、こういう返信が積み重なっていくと、コメント欄全体の空気そのものがブランドの印象になっていきます。

理念は「覚えさせる」ものではなく「判断基準」として渡す

スタッフの言葉に理念をにじませるために必要なのは、理念のスローガンを暗記させることではありません。「お客さまの立場に立つとはどういうことか」を、実際にあった質問や困りごとの事例を使って一緒に考える機会を作ることのほうが、ずっと効果があります。たとえば月に一度、実際に届いたコメントをいくつか持ち寄って「自分ならどう返すか」を話し合うだけでも、判断基準は少しずつ揃っていきます。マニュアル通りの返信しかできないスタッフが多いブランドほど、理念が現場まで届いていない証拠だったりするので、コメント返信の内容を定期的に振り返る時間を作ることをおすすめします。

日常のコメント返信でこうした姿勢が積み重なっていると、いざ値上げやトラブルといった難しい場面での説明でも、お客さまは「この会社らしい説明だ」と受け止めてくれやすくなります。逆に普段が事務的な対応ばかりだと、いざというときに丁寧な説明をしても取ってつけたように見えてしまうことがあるので、日々の言葉づかいの積み重ねは想像以上に大事なんです。次の章では、その「いざという場面」である値上げやトラブルの説明について、もう少し具体的に見ていきます。

値上げやトラブルの説明で、会社の本性が試される

原材料費の高騰などを理由に値上げのお知らせを出す場面は、ここ数年でどのブランドにも一度はあったはずです。この投稿こそ、理念が飾りで終わっているか、本当に浸透しているかが一番はっきり出る瞬間だと感じています。普段の投稿では姿勢を出せていたブランドでも、値上げの告知になると急に他社と同じような無機質な文面に変わってしまうことがあり、そのギャップに気づくお客さまも少なくないんです。うちのチームでも値上げのお知らせ文の相談を受けることがありますが、ここで初めて「うちの会社は何を大事にしていたんだっけ」と立ち止まるケースが少なくありません。

「原材料費高騰のため、誠に勝手ながら価格を改定させていただきます」という文面は、事実としては正しいのですが、どこか他人事のような響きに感じられてしまいます。一方で「品質を落とすという選択肢は取りたくなかったので、価格を見直すことにしました。理由を隠さずお伝えします」のように、なぜその判断をしたのかという会社の姿勢が一言添えられているだけで、同じ値上げでも受け止められ方は変わってきます。実際、こうした説明の投稿には「大変な中がんばってください」というコメントがつくこともあり、値上げの発表がむしろ応援の声を集めるきっかけになることもあるんです。20代女性は値上げそのものより、説明の仕方に会社の姿勢を感じ取っている印象があるんです。

トラブル対応こそ、姿勢が一番伝わる

発送の遅延や在庫切れといったトラブル対応でも、同じことが言えます。「ご不便をおかけし申し訳ございません」とだけ書かれた定型文の謝罪よりも、「何が原因で、今どう対応していて、次からどう防ぐつもりか」まで具体的に書かれている説明のほうが、信頼を積み増ししてくれる傾向を感じています。原因を濁さずに説明している投稿には、責める口調のコメントよりも、心配したり労ったりするコメントのほうが集まりやすい印象もあります。うまくいっているときの発信より、うまくいっていないときの発信のほうが、実はその会社の本性がよく見える場所なんですよね。

値上げやトラブルの説明を、法務的なリスクを避けるための事務作業として扱ってしまうと、言葉はどうしても他人事の響きになってしまいます。普段からスタッフの言葉に姿勢がにじんでいるブランドほど、こうした難しい場面でも「らしさ」を保った説明ができている印象があります。逆に言えば、値上げやトラブルの説明文だけを急いで対策しても、普段の発信とちぐはぐなら見抜かれてしまうということでもあるんです。日々の小さな接点の積み重ねが、こういう本番の場面で効いてくるんですよね。

理念が「飾り」で終わる会社と、日々に滲み出る会社の分かれ目

ここまで4つの接点を見てきましたが、理念が飾りで終わってしまう会社と、日々の発信に自然と滲み出ている会社との違いは、理念の中身の良し悪しではないと感じています。同じくらい立派な言葉を掲げていても、片方は伝わり、片方は伝わらない、ということが実際に起きているんです。ホームページのミッションページを見比べても、正直そこまで大きな差は感じられないことも多いんですよね。差が出ているのは、その理念が日々の接点までちゃんと降りてきているかどうかという、もっと地味な部分なんです。

違いを生んでいるのは、理念という「言葉」を、SNS担当・カード担当・スタッフ教育担当がそれぞれ自分の持ち場で翻訳できているかどうかだと感じています。理念が経営層の中だけで完結していて、現場の担当者が「じゃあ自分のコメント返信ではどう表現すればいいか」まで落とし込めていないと、接点ごとに姿勢がバラバラに見えてしまいます。担当者が変わるたびに文言のトーンが変わってしまうブランドを見ると、だいたいこの翻訳の作業が誰の仕事にもなっていないことが多いんです。逆に、担当が変わっても判断基準がぶれない会社は、SNSもカードもスタッフの言葉も、同じ方向を向いているように感じられるんです。

実際にどこで差が出やすいのか、ここまで見てきた4つの接点を「飾りで終わっている状態」と「日々に滲み出ている状態」で並べてみました。1つずつのチェックというより、自社の今の状態がどちらに近いか、ざっくり当てはめながら読んでみてください。全部が右側である必要はなくて、どこか1つでも右側に寄せられそうな接点が見つかれば、そこから手をつけてみるくらいの気軽さで十分だと感じています。

接点飾りで終わっている状態滲み出ている状態
SNSプロフィール誰にでも当てはまる説明文大事にしていることが一言でわかる
同梱カード・タグ定型の感謝文言のみ想いや次の行動につながる一言がある
スタッフの言葉マニュアル通りの事務的な返信状況に合わせた血の通った返信
値上げ・トラブル説明他人事のような定型謝罪理由と姿勢を隠さず説明している

この表で「飾りで終わっている」側に多く当てはまったとしても、悲観する必要はありません。理念そのものを作り直す必要はなくて、すでにある想いをそれぞれの接点の担当者と一緒に翻訳し直すだけで、印象は変えていけるはずです。むしろ理念を一から作り直すより、今ある言葉をどう接点に落とし込むかを考えるほうが、ずっと早く効果が出ると感じています。担当者みんなで表を見比べながら「うちは今どこが弱いか」を話し合う時間をつくるだけでも、次の一歩が見えてくるはずです。

まとめ

20代女性が「この会社を応援したい」と思うかどうかは、立派な理念のポスターやミッションステートメントで決まるものではなく、SNSプロフィールの1行、同梱カードの一言、スタッフの言葉づかい、そして値上げやトラブル時の説明といった、日々の小さな接点の積み重ねで決まっているんです。どれも単体で見れば地味な場所ですが、こうした接点をひとつずつ丁寧に扱えているかどうかが、結果として「応援したい会社」と「そうでない会社」を分けているように感じています。

大事なのは、新しく立派な理念を作ることではなく、すでに社内にある想いを、それぞれの接点に合わせて翻訳し直すことだと感じています。担当者が変わっても判断基準がぶれないように、日頃から「うちの会社ならどう答えるか」を話し合っておくだけで、接点ごとの言葉は自然と揃っていくはずです。SNS担当、カード担当、接客担当がそれぞれ別々の場所で判断していても、根っこの基準さえ揃っていれば、外から見たときにちゃんと一つのブランドとして伝わっていくと感じています。

まずは自社のSNSプロフィールを開いて、今の1行が姿勢を伝えられているか、見直すところから始めてみてください。同梱カードの文言や、よくあるコメントへの返信テンプレートも、あわせて見返してみると、思っている以上に発見があるはずです。小さな接点からで十分なので、うちのチームも日々そうした積み重ねを大事にしながら、これからもいろいろなブランドの発信と向き合っていきたいと感じています。


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