
楽天やInstagramのフォロワー、ECの売上は伸びているのに、実店舗のレジ前は思ったより静かなまま——そんな相談を受けることが、正直かなり増えてきました。うちのチームがEC・SNSの数字を毎日見ている立場から言うと、これは決して珍しい現象ではなくて、20代女性の実店舗集客においてはむしろ「よくあるつまずき方」だと感じています。
オンラインでの発信と、実店舗への来店は、実は別のゴールを持つ活動なんですよね。SNSの「いいね」やフォロー数がそのまま来店数に変換されるわけではなく、そこには「気になる→行ってみたいと思う→実際に足を運ぶ」という心理的な導線が必要になります。ECのように「気になったらすぐカートに入れる」ということができない分、実店舗には移動という物理的なハードルがもう一段階あるんですよね。だからこそ、SNSの発信の仕方も、EC向けとはちょっと違う組み立てが必要になってくると感じています。
この記事では、20代女性が実店舗に来るきっかけがどこで生まれているのか、そして私たちが実際に支援した事例も交えながら、SNSから来店につなげる導線設計を一緒に整理していきたいと思います。すでにSNS運用をしている方も、これから始めたい方も、今日から見直せるポイントを持って帰ってもらえたらうれしいです。
特に、駅から少し離れていたり、周辺に競合が多かったりする実店舗ほど、この「オンラインは強いのに来店が伸びない」という悩みを抱えやすい印象があります。裏を返せば、SNSでの発信の仕方を少し工夫するだけで、立地の不利を補えるチャンスも大きいということなんですよね。
まず前提として押さえておきたいのが、20代女性にとって「お店を知る」という体験そのものが、検索や口コミよりも先に、SNSの中で起きているという点です。TikTokやInstagramのタイムラインを何気なくスクロールしている中で、たまたま流れてきた1本の動画や1枚の写真に「これ、いいな」と引っかかる。そこから店名で検索したり、位置情報タグから場所を確認したりして、初めて「行けそうな場所にあるお店」として認識される——という流れが、20代女性の感覚としてはかなり自然になっているんです。
この「引っかかり」を生んでいるのは、フォローしているアカウントの投稿だけとは限りません。おすすめ欄やレコメンドで、フォローしていないお店の投稿が急に流れてくることも多くて、そこで初めて店名を知る、ということも普通に起きています。つまり、フォロワー数がまだ少ないお店でも、投稿の中身次第で新しい人に出会えるチャンスが十分にあるということなんですよね。
ここで、1本の投稿が大きく伸びる「バズ」を目指したくなる気持ちも分かるのですが、うちのチームとしては、それだけを狙った発信はあまりおすすめしていません。1本だけ話題になっても、そのときだけの盛り上がりで終わってしまうことが多く、来店にはつながりにくいんですよね。むしろ同じアカウントを何度も見かけることの方が、20代女性の中で「知ってるお店」という認識に変わりやすいと感じています。
実際に反応が生まれやすいのは、季節ごとの店内装飾、期間限定の入荷、スタッフの私服コーディネートといった「今しか見られない」「その人しか出せない」要素が乗った投稿だと感じています。逆に、いつ見ても同じ内容の投稿は、タイムラインの中で素通りされやすい傾向があります。共通しているのは、「これは今日か今週だけの光景かもしれない」と感じさせる鮮度と、「ここでしか見られない」という固有性の2つで、どちらか一方が乗っているだけでも投稿の見え方はかなり変わってくる印象があります。逆に、商品のスペックや価格の説明だけで終わってしまう投稿には、この2つの要素がどうしても乗りにくく、結果的に素通りされやすくなってしまうんですよね。うちのチームで投稿の企画を考えるときも、まずこの「鮮度」と「固有性」の2つを満たしているかどうかを、最初のチェックポイントにしています。
そして大事なのは、その「引っかかり」が起きた瞬間、まだ来店の意思はゼロに近いということです。フォローもしていない、店名もまだ覚えていない状態からスタートして、何度か接触するうちに少しずつ「知ってるお店」に変わっていく。だからこそ、SNS発信を一度きりの告知として捉えるのではなく、同じ人に何度も自然な形で触れてもらう積み重ねとして考える必要があると、うちのチームでは考えています。
もう一つ意識しておきたいのが、SNSでの発信がそのまま「売り込み」に見えてしまうと、この積み重ねがうまく働かなくなるという点です。何度も接触してほしいのに、投稿を見た瞬間に「広告っぽい」と感じられてしまうと、そこで距離を置かれてしまうんですよね。この理由については実店舗のSNS発信が「売り込み」になってしまう理由で詳しく触れているので、気になる方はあわせて読んでみてください。
ここで、私たちトゥエルブが実際に支援している、実店舗を持つクライアントさまの事例を紹介させてください。もともとポスティングやWeb広告にもしっかり投資されていたのですが、思うように実店舗への来店につながらず、費用対効果に悩まれていた状態からのご相談でした。
あらためて事例の背景を補足すると、このクライアントさまは都心の渋谷店と、郊外にある本店という、客層も立地条件もかなり違う2つの店舗を運営されていました。もともとInstagramでの発信自体は行っていたものの、投稿内容は新商品の入荷案内やセール告知が中心で、更新のタイミングも担当者の手が空いたときにまとめて出す、という形になっていたんですよね。ポスティングやWeb広告への投資を続けながらも実店舗への来店数がなかなか伸びない状態が続いていて、「オンラインでの発信量を増やしても、来店にはうまく結びついていない」という感覚を強く持たれていたのが、ご相談をいただいた時点での状況でした。特に渋谷店は近くに同じような業態のお店も多いエリアだったため、投稿を見た人の記憶にどれだけ残るかが、来店を左右する大きな要素になっていました。
振り返ってみると、ポスティングは近隣に一方的に情報を届けられる一方で、20代女性の日常の中には入り込みにくい媒体だと感じています。Web広告も、すでに「欲しいもの」や「行きたい場所」が具体的に決まっている人には強いのですが、そもそもそのお店の存在を知らない人には届きにくいという性質があります。実店舗の場合、まずは「そのお店を知ってもらう」段階からのスタートになることが多いので、この2つだけでは苦戦しやすいんですよね。
そこで軸を変えて、TikTok運用に力を入れる形で発信を強化することになりました。狙ったのは、広告的な「セール告知」ではなく、店内の雰囲気やスタッフの様子が伝わる、日常に近い発信です。新商品の入荷案内だけでなく、スタッフの何気ない一日や、季節ごとに変わる店内のディスプレイなど、日常の延長として見てもらえるコンテンツを継続的に発信していきました。SNSの中でも今回TikTokを軸に選んだのは、20代女性への届き方がInstagramとは少し違う特性を持っているからなんです。InstagramとTikTok、どちらから始めるべきか迷っている方は20代女性向けSNSブランディング、InstagramとTikTokどちらから始める?も参考にしてみてください。
結果として、半年間で都心の渋谷店は前年比180%、郊外にある本店も前年比120%という数字につながりました。
※これはトゥエルブの支援実績の一例です。成果を保証するものではなく、効果には個人差・店舗差があります。
この事例であらためて感じたのは、ポスティングやWeb広告のような「一方通行の告知」と、SNSのような「見つけてもらう発信」では、20代女性に届く力がまったく違うということなんです。特にTikTokは、フォロワー数がまだ少ない段階でも、コンテンツの内容次第で知らない人にどんどん届いていく設計になっているので、実店舗のように「まだ知られていない」お店にとってはかなり相性がいいと感じています。都心の店舗と郊外の店舗で、同じ発信の方向性でも伸び方に差が出たのも印象的で、立地によって「来店までの距離」が違う分、投稿の見せ方も少しずつ調整していく必要があると学びました。ポスティングやWeb広告を完全にやめる必要はなくて、「知ってもらう」役割をSNSに持たせることで、それぞれの施策の得意分野がはっきりしてくる、というのが今回の一番の学びだったように思います。
では、実際にどんな投稿を作れば来店につながるのか、もう少し具体的に整理してみたいと思います。うちのチームが投稿を設計するとき、いつも意識しているポイントは大きく3つあります。
お店のロゴやセール文言よりも、光の入り方や色使い、置いてある小物など「その場所らしさ」が伝わる画づくりを優先します。同じ商品でも、撮り方ひとつで「行きたくなるお店」に見えるかどうかが変わってきます。例えば新商品を紹介する投稿でも、真っ白な背景で単体を写すのではなく、窓際の自然光が入る時間帯に店内の雑貨や観葉植物と一緒に写り込ませるだけで、「その場所らしさ」がぐっと伝わりやすくなります。開店前の落ち着いた時間に撮っておくと、光の入り方をゆっくり選べる分、仕上がりのクオリティも安定しやすい印象があります。
きれいに作り込んだカットだけでなく、開店前の準備風景や、お客さまと交わす何気ない会話など、少し生っぽい瞬間も混ぜていきます。整いすぎた投稿ばかりだと、逆に距離を感じさせてしまうこともあるんですよね。例えば、開店前にディスプレイを整えている様子や、スタッフ同士でその日の入荷を確認している一コマを15秒ほどの短い動画にするだけでも、「今、リアルに動いているお店」だと感じてもらいやすくなります。雨の日の傘立ての様子や、常連さんとの他愛ない立ち話をふと切り取った1枚も、作り込んだ写真より温度が伝わることがあります。
誰が接客してくれるお店なのかが伝わると、「行ってみたい」の温度が一段上がる感覚があります。スタッフが選んだ「今日のおすすめコーディネート」を紹介する投稿や、お客さまからよく聞かれる質問にスタッフ自身が答える投稿など、その人の言葉が乗っているだけで、単なる商品紹介よりも親近感が生まれやすくなります。「本日の担当は◯◯です」と一言添えるだけの投稿でも、その人に会いに行きたいという気持ちにつながることがあります。
特に3つ目のスタッフの人柄は、実店舗ならではの強みだと感じています。ECには無い「この人に会いに行きたい」という感情が生まれると、それが来店の後押しになりやすいんですよね。スタッフを主役にした発信の作り方についてはスタッフがブランドになる——実店舗の「人」でリピーターを生む接客ブランディングで詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
もう一つ、意外と見落とされがちなのが、投稿の見た目の一貫性です。写真の色味や文字の入れ方、使う絵文字の雰囲気などに小さなルールを決めておくと、タイムライン上でも「あのお店の投稿だ」と気づいてもらいやすくなります。担当者が複数いる場合は、簡単なルールを1枚のメモにまとめておくだけでも、発信のブレを減らすことができます。
逆に、来店につながりにくい投稿の傾向もはっきりしていて、セール情報だけを並べた投稿や、店名や住所だけを載せた投稿は、正直あまり反応が伸びない印象があります。情報だけが欲しい人はGoogleマップや公式サイトを見にいくので、SNSにはSNSでしか伝えられない「その場所の空気」を乗せていくのがポイントだと考えています。投稿の頻度についても、毎日たくさん出すことより、無理なく続けられるペースを決めて、それを守り続けることの方が結果につながりやすいと、これまでの支援の中で感じています。
来店につなげる導線と同じくらい大事なのが、来店した後にその体験をもう一度SNSに戻してもらう仕組みです。いわゆるUGC(ユーザーが自分から発信してくれる投稿)ですね。お店の公式アカウントが発信する内容よりも、実際に行った人の投稿の方が、見ている側にとっては信頼できる情報として受け取られやすい傾向があると感じています。
お店側から一方的に発信するだけでなく、来店してくれた人が「タグ付けしたい」「シェアしたい」と思える瞬間をどれだけ用意できるかで、その後の広がり方が変わってきます。具体的には、こんな工夫が考えられます。
写真映えするディスプレイやフォトスポットを店内の一角に用意します。例えば、季節の花や小物を使った小さなコーナーを入り口付近やレジ横に作っておくだけでも、来店した人が自然にカメラを向けたくなるきっかけになります。
タグ付けしてくれたお客さまの投稿を、お店の公式アカウントで紹介します(事前に一言確認をとるのがおすすめです)。例えば、ストーリーズで一言メッセージを添えてリポストするだけでも、紹介されたお客さまにとってはうれしい体験になり、また来店したくなるきっかけになります。
ハッシュタグを店内のポップやレジ横で軽く案内しておきます。例えば、レジ横に小さなポップで専用のハッシュタグを添えておくだけでも、投稿するときに何と書けばいいか迷わせずに済みます。
ここでのポイントは、「投稿してください」とお願いしすぎないことだと感じています。あくまで自然に発信したくなる仕掛けを置いておく、というくらいの距離感が心地よくて、無理にお願いされた投稿は見る側にもなんとなく伝わってしまうものなんですよね。紹介させてもらったお客さまの投稿には、コメントやリアクションで軽くお礼を伝えるだけでも、また来店してくれるきっかけになったりします。
タイミングについても少しコツがあって、来店してから時間が経ってしまうと、投稿するモチベーションも下がってしまいやすいんですよね。会計のタイミングや、商品を渡すタイミングで「よかったらタグ付けしてくださいね」と一言添えるだけでも、その場で投稿してもらえる確率が上がる印象があります。始めたばかりの頃はタグ付けがなかなか増えなくて当然なので、そこで仕掛け自体をやめてしまわず、案内の仕方を少しずつ変えながら続けてみるのがおすすめです。
このあたりの、20代女性が「買う前」にレビューやUGC、インフルエンサーの発信をどう見ているかについては20代女性の「買う前の行動」——レビュー・UGC・インフルエンサーをどう設計するかで整理しているので、あわせて読んでいただけたらうれしいです。
最後に、今月からでも始められる実店舗×SNS導線設計のステップを、私たちが実際にクライアントさまとご一緒するときの流れに近い形で整理してみます。どれも特別な予算や機材がなくても始められるものばかりです。大きく作り込んでから始めるより、小さく始めて少しずつ手を加えていく方が、結果的に長く続けられると感じています。
まずは大きな企画を考えるより、店内の雰囲気やスタッフの様子が伝わる投稿を1本だけ決めて出してみることから始めてみてください。完璧な1本より、続けられる1本の方が、結果的に来店につながる力を持っています。最初は反応が小さくても、同じ空気感の投稿を積み重ねていくことに意味があります。撮影も、スマートフォン1台とちょっとした光の当たる場所があれば十分に始められます。
プロフィールに店舗の場所や営業時間をわかりやすく載せる、位置情報タグを毎回つける、といった細かい導線を整えていきましょう。ここが整っていないと、興味を持ってもらえても来店までの距離が遠くなってしまいます。プロフィールを見ただけで「営業時間・場所・雰囲気」が分かる状態を目指すのがおすすめです。地図アプリのリンクをプロフィールに貼っておくだけでも、行き方を調べる手間がひとつ減って、来店までの距離が少し近くなります。
フォトスポットやハッシュタグ案内など、来店した人が自然に発信したくなる仕掛けを、まずは1つだけ店内に置いてみてください。増やすのはそのあとで十分です。仕掛けを置いたら、実際にどれくらいタグ付けされているかも、少しずつ見ていけるといいですね。反応が薄いようであれば、置き場所やひと言の案内文を変えてみるだけでも、結果が変わることがあります。
この3つのステップは、どれも1人で、今日から手をつけられる範囲のものばかりです。人手をかけて一気に整えるよりも、無理のないペースで小さく回し続けることの方が、20代女性との距離を縮めるうえでは効果的だと、これまでの支援を通じて感じています。
このステップを回しながら、どの投稿が来店やUGCにつながりやすいかを見ていくと、自分のお店に合ったやり方が少しずつ見えてきます。実店舗のSNS運用全体の始め方・続け方・注意したいNG例については実店舗のSNS活用法【2026年版】来店につなげる始め方・続け方とNG例にまとめているので、これから体制を整えていきたい方はぜひチェックしてみてください。
20代女性にとって、実店舗を知るきっかけは、もう検索でもポスティングでもなく、SNSのタイムラインの中にあります。そこで大事なのは、SNSを「告知の場」ではなく「発見してもらい、少しずつ距離を縮めていく場」として設計していくことなんです。
私たちトゥエルブがご一緒してきた事例からも、世界観や空気感、スタッフの人柄が伝わる発信を積み重ねていくことで、実店舗への来店という結果につながっていく感覚を持っています。今回紹介したステップは、どれも大きな予算や特別な機材がなくても、今月から始められるものばかりです。
すぐに来店という結果が出なくても、焦らなくて大丈夫です。SNSは「知ってもらう」までの距離を縮める役割で、実店舗はそこから先の「体験」を届ける場所なんですよね。この2つがつながったとき、初めて数字として来店が動き始めると、うちのチームは考えています。まずは1つ、投稿の作り方を見直してみるところから、始めてみてください。
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