
名刺交換をした後、紹介を受けた後、求人を見つけた後。相手が次にやることはほぼ決まっています。社名で検索することです。
そこで出てきたページが、住所と資本金と沿革だけだったとしたら。相手はその会社について何も分からないまま、判断を保留します。商談の前に、静かに一歩後退している状態です。企業ブランディングで最初に手を入れるべきなのは、実はここだと考えています。
この記事では、社名で検索してきた人が最初に見るページを、どう組み立てるかを具体的に書きます。会社概要は「登記情報を並べる場所」だと思われがちですが、実際には比較検討の最終段階にいる相手が読む、最も重要な営業資料です。
扱う内容は、置くべき7つの要素とその順番、事業内容の書き換え例、スマホでの見え方、そして読み終えた人をどこに送るかまでです。新しく広告費をかける必要がなく、すでに来ている人への効果なので、費用対効果が読みやすい領域でもあります。
意外に思われるかもしれませんが、社名で検索される回数というのは、多くの会社が思っているより多いです。当社自身のデータで説明します。
直近28日の検索データを見ると、当社サイトへの検索流入のうちクリックの約28%が社名での検索でした。しかも社名での検索のクリック率は40%を超えています。一方でサイト全体の平均クリック率は2%程度です。桁が違います。
社名で検索してくる人は、すでにあなたの会社に関心がある人です。
広告費をかけて連れてくる必要のない、最も濃い相手が、毎日勝手に来ています。
この人たちは、比較検討の途中にいます。名刺をもらった営業マンの会社を調べている、紹介された会社が信頼できるか確認している、求人に応募するか迷っている。意思決定の直前です。ここでの体験が、そのまま結論に影響します。
ところが多くの会社概要ページは、こうなっています。
これは間違いではありません。必要な情報です。ただ、訪問者が知りたいことの順番になっていないという問題があります。
検索してきた人が知りたいのは、資本金ではありません。「この会社は何をしてくれる会社で、自分に関係があるのか、信頼できるのか」です。登記情報は信頼の裏付けとして必要ですが、それは後半で足りるんです。
情報の順番が重要な理由には、実証的な裏付けがあります。NN/g(Nielsen Norman Group)の視線追跡調査では、Webページを読むとき人の視線はF字型に動くことが確認されています。ページ上部を横に読み、少し下でもう一度横に読み、あとは左側を縦に流し見る、という動きです。
つまり実務上、こうなります。
| 位置 | 読まれ方 | 置くべきもの |
|---|---|---|
| 最上部 | ほぼ必ず読まれる | 誰に何を約束する会社かの一文 |
| 各ブロックの左頭 | 流し見でも目に入る | 意味を担う語(飾り語ではなく) |
| 中盤 | 見出しだけ拾われる | 見出しだけで要旨が伝わる小見出し |
| 下部 | 必要な人だけ到達 | 登記情報・沿革・アクセス |
「会社概要」という名前に引っ張られて登記情報から始めると、最も読まれる場所を最も伝わらない情報に使うことになります。ここを入れ替えるだけで、同じ情報量でも伝わり方が変わります。
具体的な構成案です。上から順に並べています。
ここが最重要です。「〇〇に困っている△△の方に、□□を提供します」の形。抽象的な理念ではなく、対象と提供価値が入った一文にします。作り方はブランディングは「約束」から始まるで詳しく書きました。
「ソリューションを提供」ではなく、実際にやっている作業が想像できる言葉で。訪問者が自分の困りごとと結びつけられるかどうかが分かれ目です。
中小企業では、これが信頼の中心になります。大企業なら会社の看板で足りますが、規模が小さい会社を判断するとき、人は「どんな人がやっているか」を見ます。代表者の考えや、実際に手を動かしている人の顔が見えるかどうかで、印象は大きく変わります。
ここを書いている会社はほとんどありません。だからこそ効きます。「うちはこういう案件はお受けしていません」と明示すると、逆に信頼が上がります。全部できると言う会社より、範囲が明確な会社のほうが安心されるからです。
取引社数、支援領域、事例。ここで注意したいのは、数字を主役にしすぎないことです。成長率のような数字だけを大きく出すと、かえって疑われます。どんな困りごとにどう向き合ったかを添えたほうが、実感を持って読まれます。
読み終えた人が何をすればいいのかを明示します。「お問い合わせ」だけでなく、いきなり相談するのは重いという人向けの選択肢(資料を見る、まず質問だけする等)も置くと、途中で止まる人を拾えます。
最後で十分です。ここまで読む人は、すでに関心が固まっている人なので、情報が下にあっても必ず見つけてくれます。
改善したかどうかは、感覚ではなく数字で確認できます。特に見るべきなのは次の2つです。
| 指標 | 見方 |
|---|---|
| 会社概要ページの直帰率 | 高いなら、読んでも次に進む理由が示せていない |
| 社名検索のクリック率 | 低いなら、検索結果に出る説明文(description)が弱い |
参考までに、当社の会社概要ページは直帰率が26%前後で、主要ページの中で最も低い値です。つまりそこまで来た人はちゃんと読んで、次のページにも進んでいる。逆に言えば、会社概要は「読まれれば効く」ページなので、そこに至る手前で取りこぼしていないかを見るのが先になります。
検索結果に出る説明文も見落としがちです。ここが自動生成のまま、あるいは他ページと同じ文章になっていると、社名で検索されてもクリックされないことがあります。社名検索は最も濃い相手なので、ここでの取りこぼしは痛いです。
創業の想いが数百字あって、事業内容が一行。想いは大事ですが、それは約束の形になっていないと伝わりません。訪問者はまず「何をしてくれる会社か」を知りたいんです。
中小企業の信頼は「実在感」で決まります。海外のオフィスで握手している素材写真は、実在感を消してしまいます。多少画質が落ちても、実際の社内や実際の人が写っているほうが強いです。
お知らせの最新が3年前、事業内容に今やっていないサービスが残っている。これは「今も動いている会社か」という一番基本的な部分を疑わせます。情報を増やす前に、古い情報を消すほうが先です。
会社概要で一番書き直す価値があるのが事業内容の欄です。ここが抽象的なままだと、読んだ人は自分に関係があるか判断できません。実際にありがちな書き方と、書き直した例を並べてみます。
| よくある書き方 | 書き直した例 |
|---|---|
| Webソリューションの提供 | 楽天・Amazonに出店している店舗の、商品ページ制作と広告運用の代行 |
| ブランド価値向上の支援 | 値引きに頼らず選ばれる状態をつくるための、商品ページとSNSの言葉づかいの設計 |
| 総合的なコンサルティング | EC担当者が一人しかいない会社の、運用そのものを引き受ける支援 |
右側は左側より格好良くはありません。むしろ地味です。ただ、右側を読んだ人は「うちのことだ」と思えるかどうかを判断できます。会社概要の役割は、格好良く見せることではなく、関係のある人に「関係がある」と分かってもらうことです。
自社では日常語になっている言葉が、読み手には通じていないことがよくあります。CVR、LTV、CRM、MA、DX。これらは社内で毎日使っていると、専門用語だという感覚が薄れます。
判断の目安として、経営者本人が自社の事業を家族に説明するとき使う言葉で書けているかを確認してみてください。そこで使わない言葉は、会社概要でも使わないほうが届きます。
事業が3つも4つもある会社は、全部を同じ扱いで並べたくなります。ただ読み手からすると、何でもやっている会社は、何が本業か分からない会社に見えます。
解決策は簡単で、順番と分量に差をつけることです。主力を先に、しっかり書く。他は後ろで短く。売上構成比の通りに書く必要はありません。今一番来てほしい相手に向けた事業を、最初に置くのが実務的な判断です。
見落とされやすい観点をもう一つ。社名で検索する人の多くは、スマートフォンで見ています。名刺を見ながら手元で調べる、移動中に確認する、といった場面が多いからです。
スマホでは横並びのレイアウトが縦に積み直されるので、PCで見たときの情報の優先順位が崩れることがあります。PCでは右側にあった重要な一文が、スマホでは下のほうに追いやられて、実質的に読まれなくなる。これは実際によく起きています。
確認方法は単純です。自分のスマホで自社名を検索して、出てきたページを上から順に読んでみる。最初の画面(スクロールなし)で「誰に何を約束する会社か」が分かるかどうかを見ます。分からなければ、そこが直すべき場所です。
細かい話ですが、影響が出やすい部分です。薄いグレーの文字を白背景に置いたデザインは、洗練されて見える一方で読みづらくなります。アクセシビリティの国際基準(WCAG)では、本文の文字と背景のコントラスト比は4.5対1以上が推奨されています。
読みづらいページは、内容を読む前に離脱されます。とくにスマホは屋外で見られることが多く、明るい場所では薄い文字がほぼ見えません。デザインの好みの前に、読めるかどうかを確認する価値があります。
同じ理由で、色だけで情報を伝えるのも避けたほうがいいとされています。「重要な箇所を赤字に」だけでは、色の見え方が異なる人には伝わりません。太字やアイコン、言葉での補足を併用するのが安全です。
楽天やAmazonに出店している会社の場合、社名で検索した人が最初に到達するのが自社サイトではなくモールの店舗ページであることも珍しくありません。この場合、店舗ページの会社紹介欄が実質的な会社概要として機能します。
モール内では使えるデザインに制約があるので、自社サイトと同じ表現はできません。それでも約束の一文と、誰がやっているかは書けます。制約の中でどう世界観を作るかはモールECでブランディングは成立するのかで扱っています。
また自社ドメインでの発信を強くしていく方向を考えている場合は、D2Cブランドの立ち上げで最初に決めることのほうが近い話かもしれません。
会社概要を最後まで読んでもらえたとして、その次がなければそこで終わります。ここが設計されていないページは、良い内容でも機会を落とします。
用意しておきたいのは、重さの違う3つの出口です。相手の温度はばらばらなので、選択肢が一つだと合わない人が離脱します。
| 相手の状態 | 用意する出口 |
|---|---|
| まだ情報を集めている | 関連する記事・事例へのリンク(気軽に読める) |
| 検討はしているが相談は重い | 資料を見る・料金の目安を見る(名乗らず進める) |
| 話を聞きたい | 問い合わせ・チャットなど直接の窓口 |
とくに真ん中が抜けている会社が多いです。「問い合わせ」しか出口がないと、まだ相談する段階ではない人は静かに離れます。名乗らずに一歩進める選択肢があるだけで、検討途中の人を拾えます。
BtoBで問い合わせが伸びない原因として多いのが、費用の情報がまったくないことです。相手は社内で相談するために概算が欲しいのに、それが分からないと問い合わせ自体を諦めます。
正確な金額を出せない事業でも、考え方や幅は書けます。何で金額が変わるのかを説明するだけでも、相手は判断できるようになります。費用の伝え方についてはEC支援の費用はどう決まるのかも参考になると思います。
中小企業の会社概要で判断が分かれるのが、代表者について書く分量です。多すぎると自己紹介の場になり、少なすぎると誰がやっているか分からない会社になります。
目安として置いているのは、経歴より「なぜこの事業をやっているか」を書くということです。読み手が知りたいのは、どこの大学を出たかではなく、この人が何を大事にして判断する人なのかです。
そして書くなら、きれいな話だけにしないほうが伝わります。うまくいかなかった時期、方針を変えた理由、今も難しいと感じていること。こうした話があると、書かれている理念が本物として読まれます。順調な話だけが並んでいると、逆に距離を感じさせます。
出したほうが信頼されやすいのは事実です。とくにBtoBで、金額の大きい取引を検討している相手にとっては、誰と取引するのかが見えるかどうかは判断材料になります。
ただ、これは個人の情報公開の判断でもあります。無理に出す必要はありません。顔写真が出せない場合は、代わりに文章の量と具体性で人柄を伝えるという選択もあります。実際に、写真がなくても文章で信頼を作れている会社はあります。大事なのは実在感であって、写真そのものではありません。
整理します。
企業ブランディングというと大きな話に聞こえますが、まず着手すべきなのは新しい発信を増やすことではなく、すでに来ている人への受け皿を整えることです。ここは追加の広告費がかからないうえ、効果が出る相手が最初から濃いという、珍しく費用対効果の読みやすい領域です。
私たちはこうしたページの設計と、その後の運用を外部の実行チームとして一緒に担っています。何から直せばいいか分からない段階でも、現状の数字を見ながら順番を決めるところからお手伝いできます。
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