
「うちだけ落ちてるのか、市場全体がそうなのか」——EC担当者なら誰でも気になる問いだ。今回は、支援クライアント(匿名)の2026年3月売上実データをもとに、昨年同月比103.6%という結果の裏側を分解する。同じ楽天市場にいながら、なぜここまで明暗が分かれたのか。数字がすべてを語っている。
支援クライアント全体の3月実績は昨年対比103.6%。ただし、この数字は「全員順調」を意味しない。2倍以上に伸びた店舗と、半分以下に落ちた店舗が同じ市場に共存している。これが2026年春のEC市場の実態だ。
楽天市場は単体で見ると横ばい〜微増。一方、Yahoo!ショッピングは伸びた。飲料家電系クライアントは前年比125%(前年月商約719万円→当年約900万円)を記録した。Yahoo側の施策次第でまだ伸びしろは十分ある。
複数チャネルを展開しているクライアントは、この月も軒並み好調だった。楽天一本で戦っている店舗との差は、3月でさらに開いた。
ECモール流通動向とメーカー型EC事業者が取るべき進路——生存戦略と沈む企業の特徴
楽天SEOへの依存を早い段階で捨てた店舗だ。SNS経由の新規流入を意図的に作りにいった。InstagramやXでのキャンペーン施策が楽天への誘導につながり、検索に頼らない集客ルートが確立された。
特徴的だったのは、商品そのものより「乗る文化」「バイクライフ」を発信したことだ。商品訴求をやめてコミュニティを作りにいった結果、ブランドファンが楽天に流れ込んできた。
アルゴリズムが変わっても揺れない。それがこの149%の正体だ。
2社の共通点は、楽天内でのユーザー体験の徹底改善だ。購入後のCRM見直し、定期購入の導線最適化、スーパーSALEに合わせたコンテンツ拡充。派手な施策ではない。地味に、確実に、リピートを積み上げた結果がこの数字だ。
特に効いたのがサンクスメールのパーソナライズだ。「また買ってください」ではなく、「この商品を買った人が次に選ぶのはこれです」という根拠を示すコミュニケーションに変えた。レビュー投稿率が上がり、それが新規流入の後押しにもなった。客単価と購入頻度が同時に上がる構造を作ったのが勝因だ。
新規参入1年目でこの数字を出した。楽天SEOが育っていない段階でTikTokを起点にファンを作り、そのままモールへ誘導する構造を作った。後発でも勝てる理由は、「モール内の戦い」をしなかったからだ。
| カテゴリ | 前年比 | 前年月商 | 当年月商 |
|---|---|---|---|
| バイク用品系A社 | 149% | ¥4,416,548 | ¥6,575,565 |
| 日用品系B社 | 172% | ¥1,004,352 | ¥1,716,418 |
| 雑貨系C社 | 172% | ¥1,947,640 | ¥3,354,165 |
| フード系D社(新規) | 460% | ¥32,144 | ¥147,853 |
| ガス系家電 | 115% | ¥15,961,771 | ¥17,186,262 |
| 家具・寝具系 | 115% | ¥17,905,620 | ¥20,596,380 |
売上が半分になった。単一チャネル依存と楽天SEO頼みの組み合わせが、アルゴリズム変動で直撃を受けた典型例だ。広告費を増やしても効果が出ず、費用対効果が悪化する悪循環に入っていた。
価格競争に引っ張られ続けた結果がこれだ。差別化のないアパレルは、楽天市場の中では最も苦しいポジションにある。SNSでのブランド発信がなく、モール内の競争だけで戦ってきた店舗は、じわじわと削られていく。
最も深刻なケースだ。前年比14%という数字は、単純な市場変化では説明できない。競合の台頭、商品ラインナップの陳腐化、SNS施策の完全不在が重なった結果だ。楽天SEOが落ちたとき、引き止める手段が何もなかった。
ペット市場は2025年以降、SNSとの連動が強い商材だ。愛犬・愛猫の日常コンテンツがInstagramやTikTokで爆発的に拡散する。その流れに乗れた競合が同じ楽天市場で伸びていく中、G社は自社の楽天ページ改善だけに注力し続けた。市場は動いているのに、戦い方が止まっていた。
3月はスーパーSALEがある。ただし、その恩恵を受けられる店舗と受けられない店舗の差が、年々大きくなっている。
効果が出やすいのは、日用品・食品・季節商品など「買い回りの対象になりやすい商材」だ。高単価・専門性の高い商品はSALE効果が薄く、むしろ割引競争に引き込まれて利益を削る結果になっている。
今回のデータで最も注目すべき変化がこれだ。特に新規顧客獲得の入り口として、SNS経由の流入が楽天内検索を上回るケースが出てきた。
Z世代はGoogleより先にInstagramとTikTokで商品を調べる。その流れが楽天市場の購買にも直結してきている。楽天SEOだけを最適化し続けても、そのパイ自体が縮んでいるなら意味がない。
もう一つ見逃せないのが、楽天市場内の広告枠の増加だ。自然検索で上位を取っても、その上に広告が並ぶ構造が強化されている。オーガニック流入の価値が相対的に下がっている以上、外部から流入を作る戦略が必須になってきた。
ECサイトを「買う側」から「売る側」に回る——出店者が知るべき消費者心理
マルチチャネル化は「リスク分散」ではなく「主戦場の確保」だ。
楽天だけでなくYahoo、自社EC、SNS。それぞれのチャネルでユーザーと接点を持つことが、特定モールの変化に左右されない土台になる。今回伸びた店舗はすべて、どこかに「もう一つの柱」を持っていた。
SNS起点の集客なしに、楽天SEOだけで伸ばす時代は終わった。
SNSで認知を取り、モールで買わせる。この構造を作れた店舗だけが、アルゴリズム変動を乗り越えている。楽天内で完結する戦略は、もうリスクが高すぎる。
| 項目 | 伸びた店舗 | 沈んだ店舗 |
|---|---|---|
| チャネル | マルチ展開 | 楽天一本 |
| 集客源 | SNS+楽天SEO | 楽天SEO依存 |
| 戦略 | ブランド構築・CRM | 価格競争・イベント頼み |
| 変化対応 | スピードで検証 | 過去の成功に固執 |
データは嘘をつかない。前年比460%の店舗と14%の店舗が、同じ市場に同時に存在している。この二極化は2026年以降も続く。むしろ加速する。
伸びている店舗には、必ず理由がある。今の戦略を一度見直したいなら、ぜひ相談してほしい。