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2024年以降のECモール流通動向とメーカー型EC事業者が取るべき進路:ECの売り上げを劇的に改善する生存戦略と沈む企業の特徴

転換期を迎えたEC市場と「ECの売り上げ」を巡るパラダイムシフトの全貌

2024年から2026年にかけて、国内の電子商取引(EC)市場および主要ECモールの流通動向は、かつてない劇的な構造的転換期を迎えている。新型コロナウイルス感染症拡大による急激な巣ごもり消費の特需が完全に沈静化し、市場が成熟期へと移行する中で、インターネット利用者の増加やスマートフォンの普及といったインフラストラクチャー面での成長要因はすでに飽和状態に達しつつある1。今後の「ECの売り上げ」を左右する決定的な要因は、単なるプラットフォームへの出品や無秩序な広告費の投下ではなく、法規制への適応、サプライチェーン全体の物流体制の再構築、そして何より顧客との直接的な関係性構築(D2C)への抜本的なシフトである。

本レポートでは、2024年以降のマクロ環境の激変と主要ECモールの流通動向を徹底的に分析し、メーカー型EC事業者が直面する喫緊の課題と、中長期的に取るべき進路を提示する。また、熾烈な競争環境の中で市場から淘汰されていく「沈むEC事業者」の致命的な特徴を浮き彫りにし、持続的な成長を実現するためのデータドリブン経営や、ソーシャルメディア(SNS)を活用した次世代のマーケティング戦略について、網羅的かつ深層的に論じていく。

1. 2024年〜2026年のECモール流通動向とマクロ環境の激変

ECモールの流通動向を分析する上で、2024年以降に発生した法規制の強化とプラットフォーム内部のルール変更は避けて通れない最重要課題である。これらの外部環境の急激な変化は、事業者の利益率や販売戦略に直接的な打撃を与え、従来型のモール依存モデルの限界を明確に露呈させている。

2025年10月「ふるさと納税のポイント付与禁止」がもたらす巨大経済圏への衝撃

国内の主要ECモール(楽天、Yahoo!ショッピングなど)の流通総額を長年にわたり強力に牽引してきた「ふるさと納税」の制度に関して、EC業界全体の生態系を揺るがす重大な法改正が実施される。2024年6月の総務省告示により、ふるさと納税のポータルサイトを通じた寄付に対するポイント付与が、2025年10月1日以降、全面的に禁止されることが正式に決定した2。現行のポイント付与の仕組みは2025年9月末をもって終了することとなる。

この法改正がECモール市場全体に与える影響は計り知れない。これまで、多くの消費者は自己負担額2,000円を相殺し、さらに実質的な利益を得るために高還元率のポイントキャンペーン(楽天スーパーSALEや超PayPay祭など)のタイミングを意図的に狙って寄付を行ってきた。しかし、ポイント還元が廃止されることで金銭的な「お得感」は大きく減少し、制度の魅力の根幹を揺るがす事態となる2。過度なポイント競争が自治体間の公平性を損ないかねないという総務省の懸念を是正するための措置であるが4、これは同時に、楽天経済圏やPayPay経済圏において大規模に循環していたポイントの流通量が劇的に縮小することを意味する。

12月にその年の正確な年収が確定してから、限度額の範囲内で駆け込みで堅実に寄付を行う「堅実層」の動向は依然として残るものの、ポイント還元目当てでモール内を回遊し、日用品やその他のメーカー商材を「ついで買い」していた層のトラフィックは激減することが予想される。したがって、モール内の巨大な回遊性や、プラットフォーム主導のポイントキャンペーンに過度に依存してきたメーカー型EC事業者は、自社の力で顧客を惹きつける独自の集客モデルへの抜本的な戦略転換が急務となっているのである。

「物流の2024年問題」がもたらす配送網の再構築とコスト構造の不可逆的な変化

ポイント経済圏の縮小と並行して、事業者の利益率を根底から脅かしているのが物流インフラの危機である。2024年4月から適用されたトラックドライバーの時間外労働の上限規制、いわゆる「物流の2024年問題」は、EC業界全体のサプライチェーンに甚大な影響を及ぼし続けている。配送リードタイムの長期化や配送料金の継続的な値上げは、EC事業者にとって「送料無料」というこれまで当たり前のように使われてきた強力なマーケティング武器の維持を極めて困難にした。

実際に、検索エンジン最適化(SEO)の観点から「ECの売り上げ」という検索キーワードにおける2026年時点の検索上位記事の構成を分析すると、驚くべき事実が浮かび上がる。上位10記事のうち、実に6記事が法規制・法改正(特に物流領域における法規制対応)に関連するコンテンツで占められているのである。さらに、3位には「物流体制の再構築」に関する具体的な課題解決記事がランクインし、8位と10位にも物流関連のニュースが位置している。

これは、EC事業者の最大の関心事が「いかにフロントエンドで集客するか」という表層的なマーケティング論から、「いかにバックエンドで持続可能な物流体制を敷き、利益を確保するか」という事業継続の根幹へと根本的にシフトしていることを如実に示している。

決済承認率とセキュリティ対策が握る「見えない売上」の行方

物流や法規制と並んで、ECの売り上げに直結する隠れた重要課題が「決済承認率」の維持と向上である。クレジットカードの不正利用が深刻な社会問題化する中、決済代行会社やカード会社はセキュリティフィルター(3Dセキュア等の追加認証)を過去にない水準で強化している。2025年末の動向として、クレジットカードの不正対策ソリューションを提供する企業が「EC売り上げに直結!決済承認率の重要性とは?」と題したウェビナーを開催するなど、カゴ落ち(チェックアウト時の離脱)を防ぐための決済手段の最適化が重要な経営課題として浮上している。正規の顧客がセキュリティの誤検知によって購入を弾かれてしまう事態は、投下した広告費を無に帰すだけでなく、ブランドへの信頼を致命的に損なう要因となっている。


2. 検索意図から読み解く「ECの売り上げ」向上の本質的

ECの売り上げを伸ばすための具体的な施策を構築する前に、ターゲットとなるユーザー(EC事業者)がどのような課題を抱えているのか、その検索意図を深掘りする必要がある。検索ボリュームが大きく競合の多いビッグキーワード(例:「EC 売上」)では大手情報サイトや巨大プラットフォームが上位を独占しており、一企業の自社ECサイトでは太刀打ちが難しいのが現状である。そのため、自社の商材に合ったニッチなロングテールキーワード(複数の単語から成る具体的な検索語句)をあえて狙うことが、競合が少なくコンバージョン率を高めるSEO戦略の定石となる。ターゲットキーワードの検索意図を深掘りし、ユーザーが本当に知りたいこと・求めている情報を考え、上位表示されている競合ページを分析して共通の切り口を見出すプロセスが不可欠である。

検索意図の分類課題の背景とユーザー心理求められるソリューション
売上停滞の根本原因の解決広告費を投下しても売上が伸びず、自社の商品が本当にオンラインで売れるのか不安を抱えている。サイトクリエイティブとリピート施策の間にギャップがある。顧客起点のコンサルティング、成功体験に基づく精緻なEC運用代行サービス。
業務効率化とデータ主導の成長多店舗展開によるルーチン業務の肥大化に悩み、限られた人員リソースで効率的に売上を上げる道筋が見えない。課題を可視化するダッシュボードツール、多店舗運営の自動化・効率化ソリューション。
特定の市場需要の取り込み既存の機能では取りこぼしている新規顧客層(例えばギフト市場)の存在に気づき、新たな購買体験を提供したいと考えている。相手の住所を知らなくても送信可能な「eギフト機能」など、機能拡張による新規売上導線の構築。

これらの検索意図から明らかなのは、現代のEC事業者はもはや「魔法のように売上が上がる画期的な集客ツール」という幻想を追っているのではなく、自社のオペレーションの根本的な見直しや、精緻なデータ分析に基づく地道な顧客体験の向上、そして特定のニッチな需要を的確に刈り取るための具体的な機能実装を求めているということである。


市場から淘汰される「沈んでいくEC事業者」の6つの致命的特徴

市場環境が厳しさを増し、プラットフォームの恩恵が縮小する中、撤退を余儀なくされるEC事業者には極めて明確な共通点が存在する。アメリカ向け越境ECで失敗する企業の事例分析は、越境ビジネスという枠を超え、国内のEC事業やD2C事業の失敗要因にもそのまま適用できる普遍的な真理を内包している。激動の2024年〜2026年において、沈んでいくEC事業者の6つの特徴は以下の通りである。

表面的なローカライズと顧客理解の欠如(UI/UXの軽視)

自社の都合や作り手の自己満足で作られた商品説明やサイト構造を、そのまま顧客に押し付ける事業者は真っ先に淘汰される。越境ECにおける「英語に直訳しただけで、文化的トーン(曖昧な表現よりも明快な論理、主観的なアピールよりも客観的な証拠重視)に合わせていない」という失敗要因は、国内ECにおいても「ブランドのポエムばかりが並び、ユーザーが本当に知りたいサイズ感、使用シーン、寸法表記などが欠落している」という状況と全く同義である。ユーザー視点のカスタマーサポートの欠如と、現地ユーザー(あるいはターゲット顧客)が違和感なく理解できる明快なUI設計の放棄は、直帰率と離脱率の急増を招く。ネイティブライターや現地スタッフ(国内であればターゲット層に合致したペルソナ)によるコンテンツ監修やユーザーテストの実施を怠る企業に未来はない。

配送・返品ポリシーの甘さによる「信頼の喪失」

ECにおいて物流は単なる「モノを運ぶ作業」ではなく、「顧客体験の最終にして最大のタッチポイント」である。「日本からの発送に1〜2週間かかりキャンセルが続出する」「破損や遅延時の対応が遅く、低評価レビューが増加する」「返品不可を過度に掲げてSNSで悪評が拡散し炎上する」といったトラブルは、ブランドの信頼を一瞬で破壊する典型的な失敗例である。成功する事業者は、スピード・透明性・柔軟性の3要素を満たす物流体制を構築し、返品ポリシーを分かりやすく明記することで初期の購買障壁を徹底的に下げている。アメリカ現地の倉庫(Amazon FBAやShipBobなど)との提携による配送コストと時間の最適化は、国内においても最新のフルフィルメントサービスを活用したリードタイム短縮の必要性を示唆している。

プラットフォームに対する「マーケティングの現地最適化」不足

楽天、Amazon、Yahoo!ショッピング、自社EC、あるいはInstagramやTikTokなど、各チャネルには特有のアルゴリズム、ユーザー層、そして購買心理が存在する。これらを完全に無視し、どこにでも同じバナー画像、同じトーンの広告、同じ商品タイトルを配信する事業者は、投資対効果(ROAS)を著しく悪化させる。現地の市場環境やプラットフォームごとの特性に最適化された緻密なマーケティングを実行できない企業は、無駄な広告費を垂れ流す結果となり、資金ショートを引き起こす。


法制度・関税・消費者保護への無理解

事業の基盤となる法務・コンプライアンスを軽視する企業は、ある日突然アカウント停止や事業停止の致命的リスクに直面する。越境ECでの関税トラブルや法規制への抵触だけでなく、国内においても特定商取引法違反、景品表示法の優良誤認、さらには個人情報保護法への対応遅れなどがこれに該当する。法改正(前述のふるさと納税のポイント付与禁止など)のトレンドや消費者保護の観点に追いつけない事業者は、市場から強制的に退場させられる。


継続的な「運用体制」が整っていない(放置主義の蔓延)

「ECサイトは作ってからが本番」であることは業界の常識であるにもかかわらず、高額な費用をかけてサイト開設や商品登録を終えた時点でプロジェクトが完了したと錯覚し、そのまま放置してしまう事業者は確実に沈む。ECサイトの運営においては、データに基づいた意思決定が不可欠である。アクセス解析ツールを用いて定期的な効果測定を行い、仮説検証とABテストを繰り返す継続的な改善プロセスと運用体制を持たない組織は、変化の激しい市場環境に適応できず、徐々に売上を落としていく。


決済手段の最適化を怠る(カゴ落ちの放置)

商品に魅力を感じてカートに入れたにもかかわらず、ユーザーが希望する決済手段(特定のクレジットカード、PayPayなどのQRコード決済、後払い決済など)が存在しないために購入を諦める「カゴ落ち」を放置している事業者は、自ら利益を捨てているに等しい8。また、前述した「決済承認率」の低下というバックエンドの異常に気づかず、セキュリティの最適化を怠ることで正常な顧客を弾き続けているケースもこれに含まれる。

これら6つの特徴に通底しているのは、「予防」という観点の圧倒的な欠落である。顧客の不満やオペレーションの綻びを事前に予測し、システムや体制でカバーするプロアクティブな姿勢がない事業者は、中長期的なECの売り上げを確保することは不可能である。

メーカー型EC事業者が取るべき進路:高度な「D2C戦略」への完全シフト

モールへの過度な依存による価格競争や、プラットフォーム主導のポイントキャンペーンの疲弊から抜け出し、前述した「沈むEC事業者の轍」を踏まないために、メーカー型EC事業者が取るべき唯一にして最大の進路は「D2C(Direct to Consumer)戦略の深化」である。

D2Cの成功の鍵は、卸売業者や小売店といった中間業者を排除して利益率を高めるという単純なコストカットの側面に留まらず、顧客との直接的な関係性を構築し、LTV(顧客生涯価値:Life Time Value)を極限まで高めることにある。今後のD2C戦略においては、単発の売り切りモデルから脱却し、サブスクリプション(定期購買)モデルの導入、ブランドを中心とした強固なコミュニティの形成、そして顧客一人ひとりの嗜好に合わせたパーソナライズ化された顧客体験の提供など、より高度で統合的なアプローチが求められる。

EC戦略におけるSNS活用の絶対的優位性とUGCの創出プロセス

前述のD2C戦略を推進する上で、SNS(ソーシャルメディア)戦略はもはやオプションではなく、ブランド存続とECの売り上げ拡大のための絶対条件である。ECサイトにSNS戦略を組み込むことには、事業成長を加速させる4つの明確なメリットが存在する。

第一に、「無料で始められる」という初期投資のハードルの低さである。莫大な広告予算を持たない新興ブランドであっても、コンテンツの質と企画のアイデア次第で数万から数十万人の潜在層にリーチすることが可能である。第二に、「ユーザーのファン化を促せる」点である。単なるセールス情報の発信にとどまらず、コメントへの丁寧な返信や、ブランドの裏側を見せる透明性の高い発信を通じて、顧客のブランドに対する愛着(エンゲージメント)を醸成できる。

第三に、「アンケートなどでユーザーの声やデータを集めやすい」ことである。Instagramのストーリーズ機能等を活用すれば、リアルタイムで商品に対するフィードバックや市場の細かなニーズを低コストで収集できる。そして第四に、これらが複合的に機能することで、最終的に「見込み客の獲得(リードジェネレーション)」に直接的につながる点である。

インフルエンサーマーケティングとUGCの戦略的連動

ソーシャルメディア戦略においては、ブランド公式アカウントからの発信だけでなく、インフルエンサーマーケティングとUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)の活用が不可欠である。現代の消費者は、ブランドが自賛する美辞麗句の広告コピーよりも、実際の利用者がSNSに投稿した生の声(リアルなレビュー、使用中の写真、動画など)を圧倒的に強く信頼する傾向にある。

具体的な施策として、自社商材の世界観と親和性の高いインフルエンサーとのコラボレーション企画の実施、Instagramショッピング機能の導入による「SNSでの発見からECでの購買までのシームレスな移行」、さらには良質なUGCを収集し、自社ECサイト内の商品ページに埋め込むコンテンツマーケティングなどが挙げられる1。また、ライブコマースを実施することで、画像とテキストだけでは伝わらない商品の立体的な魅力や質感を熱量高く伝え、視聴者の共感と衝動買いを同時に誘発することも、新たな顧客体験の創出として極めて有効である。

顧客体験(CX)を最大化するオムニチャネル(OMO)と最新テクノロジーの融合

ECサイトの競争力を高める上で最も重要な要素は「顧客体験(CX)の向上」である。価格や基本スペックがコモディティ化(同質化)しやすい現代の市場環境において、購買プロセスの心地よさや、自分のためだけに用意されたかのようなパーソナライズされた対応こそが、他社との比較を無効化する唯一無二の差別化要因となる。

ここで極めて重要になるのが、OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)戦略の深化である1。実店舗を持つメーカーの場合、ECサイトと実店舗を対立する別々のチャネルとして切り離して考えるのではなく、一つの統合されたシームレスな顧客体験として再構築しなければならない。AIやビッグデータなどの技術革新を活用した具体的なCX向上施策は多岐にわたる。

高度な顧客体験を提供するテクノロジーの実装例として、まずAIを活用したレコメンドエンジンの導入が挙げられる。過去の膨大な購買履歴やサイト内の行動履歴をAIが分析し、「あなたにおすすめ」の商品を高精度に提示することで、クロスセル(関連商品のついで買い)を自然に促し、顧客単価(AOV)を引き上げる。

次に、チャットボットによる24時間体制のカスタマーサポートである。ユーザーが抱える「配送にかかる時間は?」「返品は可能か?」といった疑問に対してAIが即座に回答することで、前述の「沈む事業者の特徴」で指摘した離脱要因を事前に潰すことができる1

さらに、実店舗とECサイトのポイント・顧客情報の完全な連携はOMOの基盤である。オンラインで購入した商品を実店舗で受け取れるBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)サービスの提供は、物流の2024年問題に伴う配送料の高騰を事業者側・顧客側の双方で回避できるだけでなく、店舗への来店機会を創出し、実店舗での追加購買のチャンスを生む。また、アパレルや家具などの商材においては、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を活用したバーチャル試着・配置シミュレーションの導入が進んでいる。これにより、オンライン上での最大の障壁である「サイズ感や色味の不安」を技術の力で解消し、コンバージョン率を劇的に向上させることが可能となっている。

持続的な成長を支えるデータドリブン経営と重要KPIの精緻な設定

D2C戦略への移行、SNSのフル活用、OMOやAIテクノロジーの実装といった一連の高度な施策は、すべて精緻なデータ分析に基づいて効果測定されなければならない。ECサイトの運営においては、もはや担当者の勘や過去の経験則に頼るのではなく、「データドリブン(データ主導)な意思決定」が組織のDNAとして組み込まれていることが不可欠である。

サイトを構築して満足し、継続的な運用体制を放棄する「放置主義」が失敗の典型であることはすでに述べた。これを防ぐためには、Google Analyticsなどの高度な分析ツールを活用して定期的に効果測定を行い、ABテストを繰り返す強靭な運用体制の構築が必須である。ECの売り上げという抽象的な結果を構成要素に分解し、ボトルネックがどこにあるのかを常に監視するためには、主要なKPI(重要業績評価指標)を正しく設定し、チーム全体で追及する必要がある。

メーカー型EC事業者が厳密にトラッキングし、改善のアクションにつなげるべき主要なKPIは以下の通りである。

指標名英語略称戦略的位置づけと改善のための着眼点
売上高Sales最終的な事業成長の絶対指標。単一の施策で上がるものではなく、以下の全KPIの掛け合わせの総合結果として表出する。
コンバージョン率CVRサイト訪問者のうち、購入に至った割合。サイトの使いやすさ(UI/UX)、決済手段の豊富さ、商品ページの説得力(UGCの有無など)に直結する。
顧客単価AOV1回の注文あたりの平均購入額。AIレコメンドによるクロスセルや、送料無料ラインの戦略的な設定、バンドル(まとめ売り)施策の成果を示す。
リピート率Repeat Rate既存顧客が再度購入した割合。商品の本質的な品質、購入後のフォローアップ(CRM施策)、ブランドのファン化の進捗を測る最も重要な健全性指標。
新規顧客獲得数AcquisitionSNSマーケティング、インフルエンサー施策、SEO、広告運用による純粋な新規流入と獲得の成果。LTVが高ければ、ここに投下できる予算が増加する。
顧客維持率Retention一定期間内に継続して取引がある顧客の割合。特にD2Cにおけるサブスクリプションモデルにおいて、解約率(チャーンレート)と対をなす最重要指標。
顧客生涯価値LTV一人の顧客が取引を開始してから終了するまでに企業にもたらす総利益。D2C戦略の最終的な成功を測る北極星指標(North Star Metric)である。

特にD2Cモデルにおいては、新規顧客を獲得するための単発のCPA(顧客獲得単価)の安さを近視眼的に追うのではなく、長期的視点に立ち「LTV」をいかに最大化するかが勝負の分かれ目となる。LTVが高ければ高いほど、新規獲得のためのマーケティング費用に競合よりも多くの予算を強気に投下できるようになり、結果としてシェアを拡大できるという強者のサイクルに入ることができるのである。


結論:2025年以降のEC市場を勝ち抜くための総括とメーカーの使命

2024年以降の「物流の2024年問題」による配送料高騰とリードタイムの長期化、そして2025年10月に控える「ふるさと納税ポイント付与禁止」に伴うプラットフォーム経済圏の地殻変動など、EC事業者を取り巻くマクロ環境はかつてないほどの厳しさを増している。既存の巨大モールに出店し、プラットフォームが主催するポイント還元キャンペーンの波に便乗して一時的な売り上げを立てるという受動的なビジネスモデルは、もはや急速に機能不全に陥りつつある。さらに、決済セキュリティの強化による見えないカゴ落ちや、法規制への対応遅れは、事業者の体力を静かに、しかし確実に奪っていく。

EC事業者が、市場から「沈む企業」の共通点である表面的なローカライズ、物流軽視、法制度への無理解、そして運用放置という致命的な過ちから脱却するためには、自社にしか提供できない独自の価値を根本から再定義しなければならない。メーカー型EC事業者が取るべき唯一にして最強の進路は、もはや商品を並べて待つことではなく、顧客と直接繋がり、ブランドの確固たる世界観を共有する高度な「D2C戦略」への完全なシフトである。

SNSやUGCを戦略的に駆使して熱狂的なファンコミュニティを形成し、実店舗とデジタルの垣根を越えたOMOや最新のAIテクノロジーを用いて、購買体験を極限までパーソナライズ化すること。そして、それらすべての施策をLTVという最終指標に基づき、データドリブンに評価・改善し続ける強靭な組織体制を構築すること。これらの一連のサイクルを泥臭く、しかし精緻に回し続けることができた事業者のみが、変化の激しい次世代のEC市場において確固たる地位を築き、持続的に「ECの売り上げ」を最大化していくことができるのである。プラットフォームの庇護から抜け出し、自律したブランドとして顧客と直接対話する覚悟こそが、これからのメーカー型EC事業者に求められる最大の要件である。

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